【7月12日 AFP】「世界のベストレストラン50」の1位に選ばれたフランスの店では今、月の満ち欠けに合わせた素材を提供している。同店のシェフがAFPの取材に語った。

 南仏コートダジュール(French Riviera、フレンチリビエラ)のマントン(Menton)にある地中海を望むレストラン「ミラズール(Mirazur)」のオーナーシェフで、アルゼンチン出身のマウロ・コラグレコ(Mauro Colagreco)氏(43)は、同店の菜園で自然のサイクルに合わせるバイオダイナミック農法を取り入れている。今後、この法則を料理にも採用するという。

 コラグレコ氏は、レストラン格付け本「ミシュランガイド(Michelin Guide)」で外国人シェフとしては初めてフランスで最高の三つ星を獲得している。新型コロナウイルスによるロックダウン(都市封鎖)の間、自分の菜園に癒やしを求めるうちに思い切ったことを始める決心をした。

「3月に(店を)閉めたときと同じやり方で営業を再開しようとは思っていなかった」と話す。

 ミラズールは昨年の「世界のベストレストラン50」で「最高の旬の食材」を評価され、トップに輝いた。食材としてよく使っているのが、自身の菜園の野菜だ。先月12日に営業を再開して以来、同店のメニューで提供している果実、葉菜、根菜、花はすべて、複雑な月周期を基に収穫している。

 例えば、月が満ちていく「葉の日」の期間には、アルプス(Alps)産のラム肉と藻類のシュトゥルーデルに合わせる葉物がマッチする。

 コラグレコ氏は、「ロックダウン中に庭仕事をたくさんやっていると、さまざまな心配事も片付き、地球と触れ合うことができた」と語った。「そのうちに、いろいろなことに疑問を抱き始めた。働き方、社会の発展の仕方、生産と消費の在り方などだ」

 コラグレコ氏は、昔から農作業をする人々は月の周期に合わせて植え付けや収穫を行っていたと述べ、「太陰暦は菜園ガイドの一つだ」と語った。

■ホウレンソウの種まきは月が満ちる「葉の日」に

「私たちの農作業ではさまざまなことがバイオダイナミックに関係している。例えば、ホウレンソウの種まきは、(月が満ちる)葉の日に行う。植物のエネルギーが強くなるからだ」とコラグレコ氏は言う。

 コラグレコ氏は、客には味の違いが分かると確信している。そして、月が「風の星座」(双子座、水がめ座、てんびん座)にある「花の日」には、小エビのバラの花添え、ルバーブ、アーモンドミルクといった料理や素材で味蕾(みらい)の満足度が少し高まるという。

「私たちが伝えようとしているメッセージは、自然の見方を変えること、自然との触れ合いを増やすことだ」とコラグレコ氏は語った。(c)AFP/Anna PELEGRI