【7月25日 AFP】20歳のフオンさん(仮名)は、2年間で2回の妊娠中絶手術を経験した。親や教師から性交渉について教えてもらう機会はなく、フオンさんの友人らも何も知らなかった。

「妊娠したと分かった時は怖かった…。セーフセックス(安全なセックス)について知っていたら、私たちはこのわなに陥ることはなかったと思う」とフオンさんは言う。

 しかし、これはフオンさんだけの問題ではない。専門家によると、ベトナムでは家庭や学校で性についての教育が行われておらず、その結果、まるで避妊手段の一つであるかのように中絶手術に頼る若者もいるという。

 ベトナムの現代の若者が持つ性に対する価値観は、容易にアクセスできる出会い系アプリやコンドーム、経口妊娠中絶薬と共に、社会主義国の保守的な壁を軽々と越えてしまった。

 ただ、性との向き合い方が変わる一方で、世代間ギャップにより若者は性に関する知識や支援を大人から受けることができずにいる。

 ベトナムでは性交渉について話すことが「あまり歓迎されない」──そう話すのは、性交渉や性自認についての議論に不慣れな同国で、時代遅れの考え方を変えようと活動するリン・ホアン(Linh Hoang)さん(23)だ。

 リンさんは、大人がセーフセックスについて話したがらず、そして「社会が性教育とどのように向き合うべきかが分かっていない」と指摘する。そして、自身も13歳のころの生物学の授業で、教師が性交渉に一言も触れずに生殖について説明しようとしていた経験があると話した。

 リンさんは20代前半の友人ら3人と共に、性教育に取り組むスタートアップ「WeGrow Edu」をハノイで立ち上げ、市内にある約20校の活動に関わっている。WeGrow Eduが担当する授業では、コンドームの使い方からジェンダーといった少々複雑なトピックまで若者にとって大切な情報や知識を提供している。

 健康教育プログラム「We Are Grown Up」をスタートさせ、同じく性教育の活動に当たっているという医師グエン・バン・コン(Nguyen Van Cong)さん(33)らは、これまで数千人の若者たちにセーフセックスと避妊についての情報を提供しているという。AFPの取材でグエンさんは、こうした活動を通じて、中絶手術が避妊手段の一つと見なされてしまうような、この国の「憂慮すべき傾向」と闘っているのだと話した。(c)AFP