【7月1日 AFP】重度の損傷を受けたウサギの子宮を細胞組織工学を用いて修復することに成功したとの研究結果が6月29日、発表された。生体工学技術の発展が助けとなったという。

 研究の成果は、子宮の部分的修復への道を切り開く可能性があり、いわゆる子宮因子の不妊に苦しむ女性に希望をもたらすものとなったと科学者らは考えている。子宮因子の不妊は不妊症例全体の約6%に当たる。現在のところ、子宮因子の不妊では、子宮の移植が出産の唯一の方法となっている。

 今回、米ウェイク・フォレスト大学(Wake Forest University)の研究チームは、生分解性高分子の足場を、ウサギの損傷した子宮に移植した。足場材料はウサギ自身の細胞を一部使った培養組織だ。

 英科学誌「ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)」に掲載された論文によると、移植から6か月後、この新しい組織は損傷を受けていない子宮の組織と何ら変わりがないように見えたという。そして、細胞工学で作製した組織を移植されたウサギ10匹のうち4匹は正常に出産したが、組織修復治療を受けなかったウサギでは出産はなかった。

「今回の研究成果は、子宮の異常を治療する目的で患者自身の細胞に由来する組織代替材を作製する可能性に新たな道を開いている」と、論文の執筆者らは結論付けている。

 臓器移植では、レシピエント(臓器提供を受けた移植患者)が免疫抑制剤を服用する必要があり、またドナー(臓器提供者)不足もネックとなっている。組織生体工学は、こうした問題への解決策を提供する。

 同様の生体工学技術は、ヒトの膀胱(ぼうこう)、血管、尿道、膣(ちつ)などにすでに利用されている。だが、ヒトの子宮については、この技術を用いた修復はまだ行われていない。その理由の一つは、子宮が他の臓器に比べて複雑だからだ。

 今回の研究には参加していない複数の科学者らは、人間を対象とする臨床試験に進む前に、さらに動物実験を重ねる必要があると指摘している。(c)AFP