【7月5日 CNS】中国では近年、都市住民が農村に泊まったり農家の料理を楽しんだりする「農家楽」(プチ農村旅行)が流行している。中国・新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)で「石の村」と呼ばれるタスト村(Tasite)は、村ごと「農家楽」に取り組み、成功を収めている。

 タスト村は新疆ウイグル自治区ジェミナイ県(Jeminay)に位置する。タストはカザフ語で「石」の意味。村一帯に石があり、村民は石を積み上げて家を築いている。土壌にも石が多くて作物が育ちにくく、生活は長年苦しかった。

 その「石の村」は数年前から、村全体で農村生活を生かした観光に力を入れ、自宅を使った民宿とレストランを始めた。その一人、彭金涛(Peng Jintao)さんの民宿は、庭に小石でつくった小道があり、「石の村」と刻んだ石碑がある。リフォームした室内は暖かみを感じるベッドや戸棚がある。

 今年で50歳を迎える彭金涛さん。以前は溶接工をしており、アルバイトで日銭を稼ぐ生活をしていたが、2年前から民宿を始めた。「自分の家で商売ができるなんて以前は考えることすらできなかった。昨日は7人もお客さんに来ていただいた」と笑顔を浮かべる。

 牧畜を営んでいたアダリベク・フナフアさんも民宿を始め、自ら郷土料理も作っている。以前は低所得世帯だったが、今では豊かな暮らしに。民宿用の部屋が足りず、2軒を増築した。「昨年は半年ほどで1万元(約15万円)以上を稼いだ。長女が大学に入ったばかりなので、これからも多くの観光客に喜んでもらい、お金を稼ぎたい」と話す。

 タスト村では18棟の民宿があり、部屋は54室、ベッドは122床ある。今年も40棟の民宿を新築する。村民たちは新疆ウイグル自治区で農村観光に取り組む各地を視察し、民宿のサービスや経営方法について学んできた。さらに村全体でサービスや経営能力を平準化し、向上させるため「石の村文化旅行会社」を設立。低所得世帯の村民に仕事を紹介し、44人の雇用につなげた。

「石の村」は現在、ジェミナイ県の観光の看板となっている。タスト村の近くには、2017年に発見された通天洞遺跡など多くの観光地もある。村の第一書記の王軍さん(Wang Jun)さんは「村ではこれまでに約1000人の観光客を案内した」と語る。

 観光資源が豊富な新疆ウイグル自治区では、「農家楽」に力を入れる農村が増えている。民宿やレストラン、観光ツアー、特産品の販売などで農民の収入が増加して生活が豊かになっている。2019年に新疆ウイグル自治区への観光客は2億人、観光収入は3400億元(5兆1714億円)に達し、成長率は40%以上を超えている。(c)CNS/JCM/AFPBB News