【7月1日 AFP】エチオピアは、ナイル川(Nile River)支流の一つ、青ナイル川(Blue Nile)に建設を進める巨大水力発電用ダム「大エチオピア・ルネサンスダム(Grand Ethiopian Renaissance Dam)」をめぐり、エジプトとの間で緊張が高まっている。エジプトは、国内の水需要の約97%をナイル川に依存しているためだ。

 一方エチオピアは合意がなくても、7月に注水を始める方針だ。

■流域10か国

 全長6695キロのナイル川は世界で最も長い川で、ブルンジ、コンゴ民主共和国、エジプト、エチオピア、ケニア、ルワンダ、南スーダン、スーダン、タンザニア、ウガンダにまたがっている。集水域は300万平方キロメートル以上に及び、大部分が乾燥帯の流域において水資源と水力発電の重要な供給源となっている。

 ナイル川の二つの主な支流、白ナイル川(White Nile)と青ナイル川は、スーダンの首都ハルツームで合流し、北側に位置するエジプトを経由して地中海に流れ込む。

 毎年、約840億立方メートルの水がナイル川を流れていると推定される。

■アフリカ最大のダム

 エチオピアは2011年、スーダンとの国境から約30キロ離れた青ナイル川で巨大ダムの建設を開始した。

 総工費42億ドル(約4500億円)、高さ145メートル、総貯水量は740億立方メートル、総発電量はエチオピアの現在の発電能力の倍となる6450メガワットの見込み。完成すればアフリカ最大の水力発電ダムとなる。

 エチオピアはエジプトとスーダンの合意が得られなくても7月には、ダムの注水を開始したい考えだ。

■エジプトの乾き

 人口約1億人を擁するエジプトでは、農業用水を含む水需要の97%をナイル川に依存している。

 エジプトはナイル川の取水権について、一定の割り当て水量の確保とナイル川沿いの建設工事に対する拒否権を認めた1929年の協定で保護されていると主張する。続く1959年の協定では、エジプトはナイル川の水量の約66%、スーダンは22%を利用できると定められた。

 エジプトとスーダンを除くナイル川流域国は2010年、ナイル流域協力枠組み協定に署名した。これにより、ナイル川沿いでエジプトの合意なく事業を進めることが可能となった。

■対立の激化

 アフリカで急成長を遂げる国の一つであるエチオピアは、ダムはナイル川の水の流れに影響しないと主張している。

 しかしエジプトは、ダムの注水期間中に自国への水供給が減少することを恐れている。

 9年にわたる交渉は決裂した。7月が迫った6月20日、エジプトは国連安全保障理事会(UN Security Council)の介入を求めた。

 エジプトはダムを脅威とみなしている。スーダンは、エチオピアが一方的に注水すれば、数百万人の命が「大きな危険」にさらされると警告している。

 エチオピアは6月27日、「2週間以内に」注水を開始する方針を示した。一方で、ナイル川下流の近隣国との対立については、解決に向けて努力すると明言した。(c)AFP