【6月30日 AFP】米ミズーリ州セントルイス(St Louis)で28日、白人夫婦が自宅前を通った黒人主体のデモ隊を銃で威嚇する騒ぎが起きた。さらに、インターネット上で拡散したこの動画をドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領がリツイートし、物議を醸している。

 28日夕方、セントルイス市長の辞任を要求するデモが市長の自宅前で行われていた際、沿道の住民マーク・マクロスキー(Mark McCloskey)さん(63)とパトリシア(Patricia McCloskey)さん(61)夫婦が庭に出て、それぞれアサルトライフルと拳銃を振りかざしデモ隊を威嚇した。動画では2人とも普段着にはだしで映っている。

 妻ともども弁護士のマクロスキーさんは、米CBSテレビ系の地元ニュース局に対し、デモ隊が来た時、「恐怖を感じた」と述べた。

 さらに、「家族と一緒に庭で夕食をとっていると、少なくとも100人の集団がポートランド・プレイス(Portland Place)の史跡の門を突き破り、わが家に向かって突進してきた。私たちは命の危険を感じた」「ここは全て私有地だ。公共の歩道や道路ではない」と語った。ポートランド・プレイスは、ゲーテッド・コミュニティー(周囲を塀で囲み進入を制限した居住地区)。

 マクロスキーさんは、「たちまち殺され、家を焼かれ、ペットも殺されるのではないかと怖かった。怒れる集団を目の前にして、私たちしかいなかった」と述べた。

 参加者の大多数を黒人が占めるデモ隊に対し、白人のマクロスキーさん夫婦が半自動ライフルと拳銃を向けている動画はネットで拡散。トランプ大統領もこれをコメント無しでリツイートしたが、ネット上では激しい怒りが巻き起こっている。

 セントルイス市の主任検察官キンバリー・ガードナー(Kimberly Gardner)氏はツイッター(Twitter)で、「平和的なデモの参加者に銃と暴力が向けられた」ことに「危機感を募らせている」「私たちは平和的に抗議する権利を守らなければならず、脅迫や殺傷力のある武器を用いた威嚇によってそれを抑えようとする試みは許されない」と述べた。

 一方、トランプ氏の盟友のマット・ゲッツ(Matt Gaetz)下院議員はツイッターで、11月の米大統領選で民主党のジョー・バイデン(Joe Biden)氏が勝利すれば暗黒の未来が訪れると述べながらマクロスキーさんを擁護。

 ゲッツ氏は「ジョー・バイデンの米国だったら、あなた(マクロスキーさん)の行動は違法となり、みなさんはロックダウン(都市封鎖)で家に閉じ込められ、国境は存在せず、MS-13(中米移民よるギャング組織)が隣に住み、MS-13の構成員がやって来ても警察は来ないだろう」と述べた後に、マクロスキーさん夫婦の写真を添付し「これは私たち全員の姿だ」とコメントを添えた。

 映像は28日撮影・提供。(c)AFP