【6月23日 AFP】米ストックカーレースのNASCARに参戦するリチャード・ペティ・モータースポーツ(Richard Petty Motorsports)の黒人ドライバー、バッバ・ウォレス(Bubba Wallace)は22日、チームのガレージから輪縄が発見された問題の捜査が開始された中で、感動的なレースに臨んだ。

 26歳のウォレスはこの日、アラバマ州のサーキット、タラデガ・スーパースピードウェイ(Talladega Superspeedway)で行われたガイコ500(Geico 500)の決勝レース前に、ドライバー仲間から次々とハグを受けて涙ぐむ様子をみせていた。

 NASCARはこの前日、サーキット内にあるウォレスのガレージから輪縄が発見されていたと公表。これを受けて、連邦当局はヘイトクライムの可能性があるとして捜査を開始した。

 ウォレスは最上位カテゴリーのカップ・シリーズ(NASCAR Cup Series)で唯一の黒人ドライバーであり、先日にはサーキットのイベントにおいて呼び掛けていた南軍旗の撤去に成功していた。

 悪天候でスタートが延期されていたこの日のレースは、ドライバーが大勢でウォレスを囲んで結束を固め、支援を表明する光景が見られた。スタートラインでライバルたちが自分に味方してくれたことに、ウォレスは明らかに感動している様子だった。

 さらには複数のドライバーやクルーたちが加わり、ウォレスのカーナンバー43のマシンをグリッドの先頭に押し出す場面もあった。マシンを降りたウォレスは、ドライバーたちから次から次へとハグされて涙ぐんでいたように見えた。

 最後は燃料切れで14位に終わったウォレスは、マスク無しでレース後のテレビ局のインタビューに臨み、「この競技は変化している」とすると、「マスクをしてなくて申し訳ない…、だけど昨日のことがあっても、誰であろうと僕から笑顔を取り上げることはできないと示したかった。これからも進み続けていく」とコメントした。

「きょうはドライバー全員が完全に僕と同じ立場にいたわけではないけれど、全体的に僕たちは勝利を収めた」

 チームのオーナーであり、「キング」の愛称で知られるNASCARのレジェンド、リチャード・ペティ(Richard Petty)氏もウォレスの味方に加わった。82歳になる同氏は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な大流行)が発生して以来、レースには姿を見せていなかったが、この日は現地タラデガ(Talladega)に足を運んで支援を表明した。

 ペティ氏はウォレスのガレージで輪縄が見つかったことについて、「卑劣な行為であり、人種差別を根絶するにはまだ道のりが遠いことを示すものだ」「こんなことをしでかした病んだ人間は、発見されて公の場にさらされ、可及的速やかにNASCARから排除されるべきだ」とコメントした。

「私はバッバに味方する。きのうもきょうもあしたも、そしてこれから先もずっとだ」

 米司法当局は同日、今回の問題に関して違法性があるかどうか判断するために、連邦捜査局(FBI)と司法省公民権局が捜査を開始していると明らかにした。(c)AFP