【6月11日 AFP】大家に家から追い出され、夫からは見捨てられる──サハラ砂漠以南のアフリカ地域では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する偏見が非常に強く、感染者と接触した疑いのある人々が社会から拒絶されている。

 新型ウイルスへの感染が疑われた人たちは、職場や近所、家族からさえもつまはじきにされ、のけ者扱いされたという。このような中、耐えがたい敵意に直面しないよう、治療しないことを選ぶ人もいる。

 セネガル人女性ファトゥ(仮名)さんは約1か月前、感染者と接触した後の苦い経験について語った。ファトゥさんはただちに自室に隔離され、村八分にされた。

「私のフルネームと住所が書かれたメッセージがソーシャルメディアで拡散された」とファトゥさん。「白人と寝たために新型ウイルスに感染した」とするうわさも広まったと話す。

■心理的費用

 近隣のカメルーンでは大家が新型ウイルスの陽性が確認された住民を追い出したと、首都ヤウンデ在住の疫学者ヤップ・ブーム(Yap Boum)氏はAFPに語った。ブーム氏は、国際医療援助団体「国境なき医師団(MSF)」のアフリカの研究所代表を務めている。

 新型ウイルスに対する偏見は、アフリカに限ったものではない。「しかし、ここでは共同体の結びつきが強く、近所の人はお互いを知っている」とブーム氏は言う。

 新型ウイルスに感染した症状が表れても、周囲に明かさない人も多い。ブーム氏によると、新型ウイルス感染症にまつわる偏見への恐怖から治療を受けるのが遅くなり、亡くなった人もいる。

「この闘いに勝つためには、心理的な側面を考慮しなければならない」。同氏によると、特に医療従事者は「ペストの犠牲者」のように扱われることも多い。