【6月4日 AFP】世界保健機関(WHO)は3日、関節リウマチの治療などに使われる薬剤「ヒドロキシクロロキン」の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への効果を確かめる臨床試験を再開すると発表した。

 この臨床試験は、英医学誌ランセット(The Lancet)がCOVID-19患者へのヒドロキシクロロキンやクロロキンの投与は効果がないばかりか、死亡率を高める恐れがあるとする論文を掲載したことを受けて一時中断されていた。

 WHOは、安全性について再検討した結果、臨床試験の計画を修正する必要が認められなかったためヒドロキシクロロキンの臨床試験を再開すると発表した。

■渦中の論文に「懸念の表明」──ランセット

 ランセットが掲載したCOVID-19患者へのヒドロキシクロロキンやクロロキンの投与に関する観察調査研究の論文をめぐっては、多数の科学者が研究方法と利用したデータに懸念を表明する公開質問状を出していた。データは米医療データ分析会社サージスフィア(Surgisphere)が提供したものだった。

 ランセットは2日、この研究に「重大な疑問」が持たれていることを読者に知らせるためとして「懸念の表明(expression of concern)」を発表した。「懸念の表明」は論文の撤回ほど深刻ではないが、その研究に問題がある恐れがあることを意味する。

 英オックスフォード大学(University of Oxford)のピーター・ホービー(Peter Horby)教授(新興感染症、国際保健)は、この件を機に、論文査読手続きの質を真剣に考えるべきだと話す。

 ホービー教授は、「科学出版物は何よりもまず厳格かつ誠実でなければならない。非常時にはこれらの価値観はますます必要だ」とした一方、一つの観察調査研究に基づいて臨床試験を中止するという判断は「まったく正当化できない」と述べた。(c)AFP/Paul RICARD, Kelly MACNAMARA