【6月4日 AFP】ある夜、ヒンズー教徒の隣人が、インド北部の村にあるガユール・ハッサン(Gayur Hassan)さん(55)の自宅に石を投げつけ、作業場に火をつけた。

 ハッサンさんの息子が、あるソーシャルメディアの投稿に「いいね」をしたからだ。

 ハッサンさんの息子が「いいね」をしたのは、人口13億人のインドで3月後半から新型コロナウイルス対策によるロックダウン(都市封鎖)が実施されて以来、少数派のイスラム教徒が標的にされていることを非難するフェイスブック(Facebook)の投稿だった。

 この事件で男2人を逮捕した警察によると、ハッサンさんの家族はあごひげをそり、(イスラム教徒の男性がかぶる)ふちなし帽の着用をやめない限り、さらなる報復を受けると脅迫されていた。

 溶接工として働くハッサンさんは、十数世帯のイスラム教徒と約150世帯のヒンズー教徒が暮らすインド北部ハリヤナ(Haryana)州ケオラク(Keorak)に住んでいる。ハッサンさんはAFPに電話で、「私の先祖はここに住んでいた。私はここで生まれた」と話した。

「私たちは家族のように暮らしてきた。ここではこれまで宗教は問題にならなかった」とハッサンさん。しかし今では「恐れと憎しみの雰囲気がそこら中に」はびこっているという。

 ハッサンさんの家族に対する攻撃は、新型ウイルスに関する偽情報によってイスラム教徒への憎悪をかき立てられたことで発生した一連の醜い事件の最新の例にすぎない。

 ヒンズー至上主義者は、イスラム教徒が新型ウイルスを拡散したとオンライン媒体や主要メディアなどを通じて非難するなど、イスラム教徒に対する憎しみをあおるために新型ウイルスを利用している。

 批評家は、世界最大の民主主義国家の世俗的で多元的な根源を弱体化させ、インドをヒンズー教国家につくり変えようとしているナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相に一部責任があると非難している。