【5月25日 AFP】在レバノン・フィリピン大使館は24日、レバノンでメイドとして働いていたフィリピン人女性が、同大使館が運営する保護施設で自殺したと発表した。数日前には人権団体が施設の環境について同大使館とレバノン当局に抗議したばかりだった。

 同大使館はフェイスブック(Facebook)への投稿で、22日に保護施設に到着した匿名の「家事労働者」が、翌23日に他の2人と共有していた「部屋から飛び降りたとみられる」と発表した。また、負傷した女性は24日に死亡したと明かし、「事件の詳細は現在調査中」だとしている。

 レバノンでは、主にエチオピア、フィリピン、スリランカ出身のメイド約25万人が働いている。その多くが置かれている環境については、人権団体が非難を続けてきた。

 レバノンが数十年で最悪の経済危機に直面している上、新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)措置の影響も受けて、メイドをめぐる環境はここ数か月で悪化している。

 メイドを雇う家庭の中には、価値が下がった現地通貨で家事手伝いの賃金を支払い始めたり、賃金を全く支払うことができなかったりする家庭もあり、メイドが住み込み先から追い出されたとの報告も増加している。

 雇用主が外国人労働者の身元保証人となる「カファラ(kafala)」という制度では、住み込みのメイド、ベビーシッター、ケアワーカーはレバノン労働法の対象外となっている。こうした労働者たちは雇用主の意のままとなり、月給150ドル(約1万6000円)しか支払われないという。

 フィリピン人女性の自殺前には人権団体が大使館運営の保護施設を視察し、収容人数の超過などを非難していた。(c)AFP