【5月20日 AFP】チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ(Dalai Lama)14世により、同教第2の高位者パンチェン・ラマ(Panchen Lama)に認定された後、25年前から行方不明になっている男性について、中国政府は19日、この男性が大学を卒業し、現在は「普通の生活」を送っていると発表した。米国は中国に対し、この男性の所在を明らかにするよう要求していた。

 世界的な支持を得ているノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)受賞者で、亡命中のダライ・ラマ14世は1995年5月14日、当時6歳だったゲンドゥン・チューキ・ニマ(Gedhun Choekyi Nyima)氏をパンチェン・ラマの生まれ変わりと認定した。

 パンチェン・ラマはその3日後に拘束され、以来一度も姿が確認されていない。人権団体はパンチェン・ラマを「世界最年少の政治犯」と呼んでいる。

 マイク・ポンペオ(Mike Pompeo)米国務長官は18日、「チベット仏教徒は、他のあらゆる宗教団体の信徒らと同様、政府に干渉されることなくその伝統に従って宗教的指導者を選出、教育、崇拝できなければならない」「パンチェン・ラマの居場所を直ちに公表するよう中華人民共和国政府に求める」と述べていた。

 これを受けて中国外務省は、ゲンドゥン・チューキ・ニマ氏が「国の義務教育」を受けた後、大学に入学したとし、同氏とその家族は「自分たちの普通の生活に、部外者が介入することを望んでいない」とする異例の発表を行った。

 同省の趙立堅(Zhao Lijian)報道官は定例記者会見で、同氏は「すでに働き始めた」と明かすとともに、米国に対しては「中国の国内問題に干渉するために、チベット問題を利用」しないよう警告した。

 中国政府は独自にパンチェン・ラマを任命しており、厳格に行動を指示された上で公の場に何度か姿を現しているが、多くのチベット人はこの人物をパンチェン・ラマとは認めていない。(c)AFP