【5月19日 AFP】アフリカ・サハラ(Sahara)砂漠の南縁に位置するサヘル(Sahel)地域一帯では、専門家によると、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)とイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の系列組織が銃を向け合っているといい、数年保たれた両組織による協力の時代を崩壊させている。

 両者はこれまで、シリアのような他の戦地では対決姿勢を取るものの、サヘル地域ではしばしば提携し、攻撃における連携や、戦闘員の交換すらも行っていた。

 同地域では数年の間、イスラム過激派との戦闘が続いている。こうした過激派は2012年、マリ北部で最初に姿を現し、その後、同国中部や隣国のブルキナファソやニジェールに進出。これまでに多くの兵士や市民が犠牲となり、さらに多数の人々が自宅からの避難を余儀なくされた。

 しかし、今年の初め以降、マリ中部やブルキナファソで散発していたアルカイダとIS系列の組織による衝突が、本格的な戦闘へと拡大したとみられている。

 こうしたイスラム過激派内での内紛に関する情報はほとんどなく、その多くは強盗団や民兵組織、国軍との相次ぐ衝突によって、すでに情勢が不安定な地域で発生している。

 専門家や地元当局者は、アルカイダとISによる戦闘の背景に、支配地域の拡大や飼料用農作物の入手をめぐる対立が理由の一部として存在したと話す。

 国連マリ多次元統合安定化派遣団(MINUSMA)のマハマ・サレー・アンナディフ(Mahamat Saleh Annadif)団長は、過激派同士の抗争は「もはや内密のものではない」と指摘。「行き着く先がどこになるのか分からない。どちらも相手より優位に立ちたがっている」と述べ、両組織が土地をめぐって争っていると説明した。

 マリの首都バマコに駐在する欧米の外交官によると、アルカイダもIS系組織も、これまでにサヘル地域で正式に提携関係を結んだことはない。

 だが、両組織が合同で実施した襲撃や、もう一方の組織へと移る戦闘員らの存在を指摘しつつ、それは両組織が緊密に協力することを妨げるものではなかったという。

 この外交官は、ある人がある組織、またはもう一方の組織に参加する理由には、周縁へと追いやられた民族集団に所属していたり、仕事がなかったりといった、地元事情に関連するものが多いと説明する。

 バマコにある安全保障研究所(Institute for Security Studies)の研究者、イブラヒム・マイガ(Ibrahim Maiga)氏は、争いも同様に局所的な理由で起きることが多いと指摘。「こうした争いについては、イデオロギーの角度からのみで理解すべきではない」と話す。

 例えば年初の乾期には、ニジェール川(Niger River)デルタで栽培されたブルグと呼ばれる飼料作物をめぐり、マリ中部ではよく戦闘が勃発する。

 匿名を条件に取材に応じた、マリ中部モプティ(Mopti)の安全保障専門家はAFPに対し、イスラム過激派は「他の皆と同じように」ブルグが育つ地域をめぐって戦闘を繰り広げていると述べた。(c)AFP/Amaury HAUCHARD