【5月22日 AFP】新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)により延期を余儀なくされた東京五輪。多くの国民が不要不急の外出自粛を要請される中、大会に向け調子を高めてきたトップアスリートたちはコンディションの維持に悪戦苦闘している。

 フェンシング男子フルーレで日本代表を率いる三宅諒(Ryo Miyake、29)もその一人だ。現在彼は四角い大きなリュックを背負い、都内を自転車で走り回る日々を送っている。料理の宅配サービス「ウーバーイーツ(Uber Eats)」の配達員として働いているのだ。

「自分で遠征費を捻出するため、練習に復帰する時の体力面の低下を防ぐため、この2点」がウーバーイーツを選んだ理由だとAFPとのインタビューで話してくれた。

「これだけ自分が動いて、これだけもらえるお金がある。お金の意味だけではない数字を見てモチベーションを保っている」と語る。

 2012年ロンドン五輪のフェンシング男子フルーレ団体で銀メダルを獲得し、母国開催の東京五輪出場を目指していた矢先の大会延期。アルバイトをしているという三宅について、生計に苦しむ悲劇のオリンピアンであるかのように伝えたメディアもあったが、スポンサー3社との契約を保留してほしいと願い出たのは三宅本人だ。

「練習が再開するのかどうかも分からず、試合がいつあるのかも分からない。そして自分のメンタルが1年間ちゃんと保つのかどうか、モチベーションが保つのかどうかも分からない…五輪の選考がどうなるのか全く分からない」

 大会の中止とトレーニングの中断を余儀なくされ、世界のトップアスリート同様三宅も中途半端な状況に置かれている。そんな状況で契約を延長することは「無責任だと思っている」と語った。

 その一方、新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う巣ごもり生活で需要が増えたウーバーイーツ。三宅はスマートフォンを手に広大な東京を縦横無尽に走り回っており、「赤坂、六本木の方に行くと坂道が多いのでトレーニングになる」と笑う。