【4月28日 AFP】大統領選が今年11月に予定されている米国では、新型コロナウイルスで多数の人々が犠牲になる中、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領、および民主党候補としての指名を確実にしているジョー・バイデン(Joe Biden)前副大統領がそろって中国への非難を繰り広げている。両氏のこの戦略の理由は、中国がかつてないほど米国人に嫌われているからだ。

 米調査機関ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)が21日に発表した研究によると、米国人の66%が中国について好意的ではない印象を持っており、過去最低の結果となった。米国の対中感情は、2017年にトランプ氏が大統領に就任してから着実に悪化していた。

 論文の執筆者の一人で同センターの研究員、ローラ・ミラー(Laura Miller)さんは「基本的に、過去2年のうちにネガティブな方へと劇的に変化した」と話す。

 トランプ氏は過去数週間、中国・武漢(Wuhan)で最初に確認され、米国で5万超が死亡したこの感染症について、中国がその元凶だと指弾してきた。

 トランプ陣営はすでに、初期段階でウイルスを隠蔽(いんぺい)していたとされる中国とバイデン氏を結び付けようとする広告を打っており、大統領選がいかにネガティブなものになるかという明白な兆候を示している。

 このインターネット広告では、中国の指導者らとの外交に臨む前副大統領のバイデン氏の映像が流れ、同氏が「中国の機嫌を損ねないようにした」とする文言が流れる。また根拠なく、バイデン氏は問題が多い息子のハンター(Hunter Biden)氏による事業の利害関係者に買収されていたと示唆している。

 バイデン氏も自身の広告で反撃。中国のパンデミック対応を当初は賞賛していたトランプ氏自身の発言を引用し、トランプ氏は米国を「準備不足で無防備」な状態に置いたと批判した。

 3月3〜29日、1000人を対象に電話で実施された今回の調査では、中国について好ましく思わない若年層の割合が初めて半数を超え、反中感情が米国の幅広い層に広がっていることが判明した。

 ただし論点は変化しており、2012年に主要な懸念点として挙げられていた、中国の台頭に伴う米国内の雇用喪失や、米の貿易赤字などは重要視されなくなった。

 代わって現在は米国人の大半が、環境に与える中国の影響や数々の人権問題、サイバー攻撃などを米国にとっての「非常に深刻な」問題と考えているという。

 ミラー氏は「人々はどちらかというと中国を脅威だとみなしており、さまざまな次元の話になり得る」と指摘。

「米国における選挙でわれわれがしばしばやるのは、外国を『ウィッピング・ボーイ(主人の代わってむち打ち打たれる少年)』として利用することだ。だから、もし今回中国がその役になれば、反中感情がさらに悪化することが予想される」と話した。(c)AFP/Shaun TANDON