【3月3日 AFP】「大気汚染のパンデミック」により、世界の寿命は平均して3年近く短くなっており、年間880万人が早世しているとの研究結果が3日、発表された。

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 欧州心臓病学会(ESC)誌「心臓血管研究(Cardiovascular Research)」に掲載された論文によると、石油や天然ガス、石炭の燃焼で放出される分子と肺を詰まらせる粒子の有毒な混合物を除去すれば、平均余命を丸1年取り戻すことにつながるという。

 論文の主執筆者であるドイツ・マインツ(Mainz)のマックスプランク研究所(Max Planck Institute)のヨス・レリフェルト(Jos Lelieveld)氏はAFPに対し、「大気汚染は喫煙よりも大きな公衆衛生上のリスク」であり、「そのリスクの大部分は、化石燃料をクリーンな再生可能エネルギーに置き換えることで回避し得る」と語った。

 論文によると、大気汚染による年間死者数を早世の他の原因と比較した場合、マラリアの19倍、後天性免疫不全症候群(AIDS、エイズ)およびエイズウイルス(HIV)感染の9倍、アルコールの3倍に上るという。

 論文の執筆者の一人、トマス・ムンツェル(Thomas Munzel)氏は「われわれの研究結果は、『大気汚染パンデミック』が発生していることを示している」と指摘。

「大気汚染も喫煙も予防可能だが、過去数十年間、特に心臓専門医の間で、喫煙よりも大気汚染に払われる注意の方がはるかに小さかった」と述べた。

 最大の影響を受けているのはアジアで、平均寿命の短縮年数は中国で4.1年、インドで3.9年、パキスタンで3.8年となっている。

 ムンツェル氏は、「早世の約3分の2が人間の活動による汚染に起因しており、主に化石燃料の使用によるものであることが示された」と話している。

 同氏は「この割合は、高所得国では8割に達する」と明かし、「世界中で年間550万人の死は回避できる可能性がある」という見方を示した。

 一方で研究班は、インドや中国などの新興経済国で、寿命を縮める有毒な大気に対して不寛容さが高まる兆しが見られるとしている。

 レリフェルト氏は、「大気汚染は大きな健康リスクなのだと認識することで、化石燃料の段階的廃止の意欲を高めることにつながり、地球温暖化の抑制という副次的効果もある」と述べている。(c)AFP/Marlowe HOOD