【3月12日 AFP】オーストラリア先住民アボリジニの人々は長きにわたり、土地を管理する方法として火を利用してきた。昨年から今年にかけて猛威を振るった森林火災を経験し、同国ではこの伝統的な防災方法に再び目を向け始めている。

 昨年から続いた森林火災は、気候変動による高温と乾燥で前例のない規模となった。こうした事態を受け同国では、先住民らが用いる土地管理の技術を取り入れるよう求める声が高まっている。

 東部および南部で10万平方キロ以上燃え広がった今回の火災では、少なくとも33人が死亡し、家屋2500軒が損壊した。また、10億匹の動物が死んだとも考えられている。

 東部沿岸の大雨によって同地域での火災はほぼ収まったが、科学者らは上昇する気温により森林火災が今後さらに頻発する恐れがあると警告している。

 そこで注目されているのが、アボリジニの防災方法──野焼きだ。これは、森林火災で燃料となる下生えを燃やすためのもので、一気に燃え広がらないよう細心の注意を払いながら少しずつ行われる。この野焼きによって、低木地を抜けることができるようになり、植生の新たな成長が促される。また樹冠は残るため、動物の逃げる道も確保できる。

 オーストラリア各地の消防隊員らも、大規模火災を予防するために独自の野焼きを実施している。「ドリップトーチ」と呼ばれる手持ちの道具を使ったり、ヘリコプターを使って上空から可燃材料を投下したりする方法が一般的だ。

 だが、温暖化によって森林火災が起きやすい時期が長くなり、こうしたリスク低減作業を実施できる期間は年々短くなっている。

 また現代のこうした野焼きには、制御不能な火災に発展するリスクがあり、その効果についても疑問視されている。

 今回の森林火災で最も被害が大きかったニューサウスウェールズ(New South Wales)州の先住民土地評議会「メリマンズ・ローカル・アボリジナル・ランズ・カウンシル(Merrimans Local Aboriginal Lands Council)」で代表を務めるテリー・ヒル(Terry Hill)氏は、「(現代のやり方では、)投入する燃料があまりにも多く、それ自体が火災の原因となってしまう」と指摘する。