【3月7日 AFP】中東クウェートでは栄養価の高いイナゴが珍味とされ、焼いたり乾燥させたりして食べられている。だが、消費量は徐々に減ってきており、とりわけ若者たちの中にはイナゴを食べることに嫌悪感を抱く人が多い。

 ジャーナリストのモウディ・ミフタフ(Moudi al-Miftah)さん(64)は、「あの風味が好き。子ども時代の思い出の一つだし、祖父や父を思い出す」と熱っぽく語る。

 ミフタフさんは毎年、冬の到来を待ってイナゴを買いだめし、自分で料理する。キッチンに立ち、沸騰しただし汁の中に1袋分のイナゴを投入する。イナゴはすぐに赤くなり、羊肉のシチューのような香りがキッチンを満たす。30分ゆでれば完成だ。

 カリカリとした食感を加えたい場合にはイナゴを焼いてもいいし、乾燥させれば1年中楽しめる。だが、ミフタフさんの家族の大半は、かなり前からイナゴを食べなくなってしまったという。

 イナゴは世界各地で消費されており、一部の地域では主食になっている。専門家らは、イナゴはエネルギー効率の良い優れたたんぱく源だと説明する。

 クウェートでは毎年1月になると、サウジアラビアから届くその冬最初のイナゴが市場に並ぶ。イナゴは独特の赤い袋に入れられ、250グラム単位で販売されている。

 イランのアフワズ(Ahvaz)出身のアブ・モハメド(Abou Mohammed)さん(63)は、普段はクウェート市北西部のライ(Al-Rai)市場で魚を売っているが、この時期になるとイナゴとトリュフを売る。「イナゴは(飛ばずにじっとしている)冬の夜に捕獲される」といい、味は「エビ」に似ていて「新鮮なものは非常に美味で、特に卵を抱えた雌の味は格別」だと言う。

 モハメドさんは1月から4月までのシーズン中、約500袋を販売する。1袋の価格は、3~5クウェート・ディナール(約1100~1800円)だ。

 一方、当局はイナゴが汚染されている懸念があることから消費を禁止しようと模索しているが、今のところ実現していない。またイナゴは繁殖力が強く、大群となって作物に被害を与えるため、一部の国々では殺虫剤を使った処分を余儀なくされている。(c)AFP/Salima LEBEL