【2月10日 AFP】スイスで9日、差別をめぐる国民投票が行われ、民族や宗教に基づく差別を禁じる現存の法律に性的指向を理由にした差別も刑罰の対象として加える改正案に、63%が賛成した。

 各州の集計結果では、賛成票はジュネーブ(Geneva)州が76%と最も多かった一方、非都市部のアッペンツェル・インナーローデン(Appenzell Innerrhoden)準州、シュビーツ(Schwyz)州、ウリ(Uri)州では反対が賛成を上回った。

 この改正案は2018年にスイス議会を通過したが、言論の自由の制約につながると主張した反対派が国民投票の実施を求めていた。

  ポピュリストの右派政党、国民党(SVP)の地方議員は投票前のインタビューで、改正案は「同性婚や(同性カップルが)医療支援を受けて生殖を行えるようにするなどといった性的少数者(LGBT)が推進する計画の一部」だと主張していた。

 議会で最も多くの議席を持っているSVPを除き、スイスの主要政党はすべて改正案を支持している。スイスは西欧諸国の中でも同性愛者に対する差別を犯罪とする法律が制定されていない少数の国の一つ。

 改正法の施行後は、家族や友人同士で同性愛者に対する差別的発言をしても刑罰の対象にはならないが、公共の場での同性愛者に対する中傷や差別、文章・スピーチ・画像・ジェスチャーを使って同性愛者への憎悪を扇動する行為は禁じられる。

 政府は、改正法の下でも同性婚などについて議論する際に個人の意見を表明することは可能で、またどれほど下品であっても冗談を禁止することはないとしている。

 改正法について同性愛者権利活動家らの意見は分かれている。権利団体「特別な権利に反対!(No to Special Rights!)」は同性愛者のコミュニティーに特別な保護は必要ないと主張している。(c)AFP/Dario THUBURN