【2月8日 AFP】内戦下のイエメンでは、多くの人が日々の生活に苦闘する一方、なおざりにされたままの動物園にいるライオンやヒョウ、ヒヒといった動物たちもまた、先の見えない将来に直面している。

 首都サヌアにある国内最大の動物園では男性が、園内にいるライオン31頭に餌を与えるため、トラックで毎日運搬されてくる死んだロバ数十頭を積み下ろしていた。

 サヌアは2014年、イランから支援を受け同国北部の大半を支配するイスラム教シーア派(Shiite)反政府武装組織フーシ(Huthi)派に掌握された。

 ライオンの飼育係であるアミン・マジディ(Amin al-Majdi)さんによると、2017年に死んだライオン4頭を含む一部の動物たちは餓死してしまったという。

 マジディさんはAFPに対し、「国内各地から肉を仕入れているが、ロバの値上がりで苦労している」と説明。「ライオン6頭のためにロバ3、4頭を殺処分していたが、今は31頭のために10〜12頭を処分するしかない」と語った。

 5年に及ぶ内戦により、国内では数百万もの人が餓死寸前に追い込まれているように、この動物園でも絶滅の危機にあるアラビアヒョウ2頭を含む1159頭の動物たちが命の危険にさらされている。

 イエメンの動物園にいる動物たちを生き延びさせるために資金を調達しているフランスのNPO団体「ワン・ワールド・アクターズ・アニマル・レスキュー(One World Actors Animal Rescues)」の設立者、キムミシェル・ブロデリック(Kim-Michelle Broderick)氏は動物たちに代わって闘う人物の一人だ。

 ブロデリック氏によると同団体、現場のまとめ役の手助けを得て、イエメン各地で動物の救出活動を実施。餌や水を配り、馬などの家畜や捨てられた動物たちに最低限必要な獣医学的な治療を施しているという。

 サヌアの動物園によると、激烈なインフレによって必需品の価格が上昇している他、内戦が始まって以来、来園者数が激減しているため、動物に餌を与えることが困難となっているという。

 動物園のムハンマド・アブアウン(Mohammed Abu Aoun)副園長はAFPに対し、「多くの難題に直面している」「われわれにとっての唯一の収入源は、来園者のチケット代金だ」と説明。

 副園長によると、動物園は現在、毎月200万〜300万リアル(約36万〜55万円)の収入があるが、動物たちに餌を与え、従業員の報酬を支払うには十分でないという。

 同国では国連(UN)が世界最悪の人道危機と評する内戦によって、民間人を中心に数万もの人が犠牲となり、数百万人が避難を余儀なくされた。

 しかしサヌアの動物園は、数年に及ぶ内戦に巻き込まれた人々が息抜きできる、数少ない場所の一つだ。

 来園者の一人は、「ここ最近、動物園は唯一新鮮な空気が吸える場所となった。私たちは破壊や戦争、攻撃しか目にしていない」と述べた。(c)AFP/Abdulkarim AL-MARANI with Dana MOUKHALLATI in Dubai