【3月10日 AFP】コメの主要輸出国、タイ。農業関連産業での収益が大きく見込まれる中、タイ北部・チェンマイ(Chiang Mai)県のコメ農家らは、環境に優しい栽培方法を採用している。干ばつや借金、農薬による健康問題に奮闘してきた人々だ。

 農家のスナン・ソムジャク(Sunnan Somjak)さん(58)は、腰の高さまで伸びた稲の中を歩きながらAFPに語った。ソムジャクさんの畑は農薬で「痩せ」、家族もしょっちゅう体調を崩し、収益があまりにも低くて採算が取れなかった。そうした生活が一変したのは、実験的な農業プロジェクトで、ある栽培方法に出合ってからだという。農薬を使わず、少ない水やりで収穫量を増やすことを目的としたSRI農法だ。

「化学物質はすべてを駄目にしてしまう」。チェンマイ県にあるソムジャクさんが暮らす村の農家の収穫量は、SRI農法を採用することで40%も跳ね上がった。健康上の利点もあった。「間違いなく前より元気になり、病気になることもなくなった」という。

 SRI農法は1980年代、仏イエズス会の修道士がマダガスカルで考案し、世界中に広まった技術だ。作物同士の間隔を従来より離して植えることで、それぞれの作物は、より多くの栄養素と日光を吸収する。また、田畑に与える水量を制限し、それによって増える微生物が自然の肥料として作用するようになる。

 SRI農法では、畑にまく種の数が減り、農薬の代わりに、昆虫を寄せ付けない植物やショウガの根を用いることが推奨されているため、借金を抱えた農家にとっても支出が少なくて済む。

 伝統的なタイのコメ農家の稼ぎは、月に3000バーツ(約1万円)ほど。ソムジャクさんはSRI農法を採用した後、収入が20%増えたという。

「やっと借金を完済できた」とソムジャクさんAFPに語った。(c)AFP/Sophie DEVILLER and Anusak KONGLANG