【1月22日 AFP】オーストラリア西部にある「ヤラババ(Yarrabubba)」クレーターは、22億2900万年前の隕石(いんせき)の衝突で形成されたものであることが最新の研究で明らかになった。22日の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された研究論文によると、これまでに知られている中で最も古い隕石衝突跡になるという。

 今回の研究では、ヤラババの形成年代が初めて正確に測定された。その結果、これまで最も古いと考えられていた同様の衝突クレーターよりもさらに2億年以上前に形成されていたことが判明した。

 この新たな事実によって、興味深い考察が可能となる。それは、巨大衝突が地球の気候を著しく変化させ、地球規模での凍結状態が終わる助けになったという考えだ。

 ヤラババの年代を正確に測定するため、研究チームはクレーター内の鉱物を対象に「衝突による再結晶化」の痕跡を探した。そして、ジルコンやモナザイトなどを含む物質で、隕石の巨大衝突による構造的変化が起きていることを確認した。

■「SHRIMP年代測定法」

 鉱物に記録された衝突の痕跡を探す調査は、微小な粒子を対象に行われた。用いられた技法は、「高感度高分解能イオンマイクロプローブ(SHRIMP)」年代測定法として知られる最先端のスキャン技術だ。

 この調査で特定された微小粒子に含まれるウランが、正確な年代を決定する助けとなった。分析の結果、ヤラババの形成年代は、地球が「全球凍結」として知られる凍結状態から脱した時期と一致することが明らかになったという。

 隕石のヤラババ衝突時、当時の地球の大半がそうだったように、この地域も氷で覆われていたと研究チームは推論する。研究チームが実行したモデル計算では、直径約70キロのクレーターを形成したこの巨大衝突により、最大で5000億トンの氷が蒸発し、大量の水蒸気が大気中に放出したと推計された。

 論文の筆頭執筆者で、米航空宇宙局(NASA)ジョンソン宇宙センター(Johnson Space Center)と豪カーティン大学(Curtin University)地球惑星科学学部に所属するティモンズ・エリクソン(Timmons Erickson)氏は、「隕石が氷床に衝突したとすると、大量の水蒸気が放出されたと考えられる。水蒸気は二酸化炭素(CO2)よりはるかに効率的な温室効果ガスだ」とAFPの取材で語った。

「これは、その後に地球温暖化をもたらす可能性がある」

■推測の域を出ない

 しかし、衝突当時のヤラババ帯が氷に覆われていたことを示す証拠は今のところ存在しない。これについては、研究チームも認めている。また、大規模な隕石衝突は大気の温暖化よりも寒冷化事象に関連付けられる場合の方が多い。

 今回の研究で導き出された説についてエリクソン氏は、今のところまだ推測の域を出ていないことを認めている。(c)AFP/Sara HUSSEIN