【1月21日 AFP】19世紀のオランダの画家ビンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh)が描いた陰鬱(いんうつ)な表情の自画像が20日、オランダの首都アムステルダムにあるゴッホ美術館(Van Gogh Museum)によって正式に本物だと発表された。

 ゴッホが1889年に描いた「自画像(Self Portrait)」は長年、真正について疑問の声が上がっていた。専門家によるとこの自画像は、ゴッホが精神障害に苦しんでいた頃に描かれた唯一の作品だという。

 ノルウェーのオスロ国立美術館(National Gallery in Oslo)が所蔵するこの絵画は、1970年に真贋(しんがん)性が初めて指摘されたが、同美術館は2014年になってようやく疑念を払拭(ふっしょく)するためにオランダに送り、専門家らに判断を委ねていた。

 専門家らは、X線を使った画布の分析や筆致の調査、ゴッホの弟テオ(Theo)に宛てた手紙の検証などを行い、ゴッホが1889年の晩夏、フランス・サンレミ(Saint-Remy)での療養中に描いたものだと断定した。

 ゴッホ美術館の上級研究員であるルイ・ファン・ティルボルフ(Louis van Tilborgh)氏はAFPに対し、ゴッホの自画像は「精神を病んでいる人物を描いたものであることは明らかだ」とし、「この絵画が、非常に注目すべきものであり、癒やしの効果もあることのゆえんはそこにある」と述べた。

 ゴッホはこの自画像を描く1年前、友人で画家のポール・ゴーギャン(Paul Gauguin)との口論の後、自身の耳を切り落とし、その後長年にわたり入院と療養生活を繰り返した。

 自画像は現在、ゴッホ美術館で展示されており、2021年にオスロで新たな美術館がオープンする際に返却される予定だという。(c)AFP/Danny KEMP