【1月26日 AFP】中国では、空港やホテル、ネットでの買い物、公衆トイレに至るまで、顔認証技術が浸透しているが、法律を専門とする大学教授が昨年10月、顔認証技術の使用をめぐりサファリパークを訴えたことが分かった。国内メディアによると、このような訴えは中国では初めてだという。この訴訟により、国内では個人情報の保護と侵害についての議論が高まっている。

 中国政府は先進技術において世界のリーダーとなる政策を掲げており、その一環で顔認証技術や人工知能(AI)の商業利用や防犯などを手掛ける企業を支援している。市民の多くも、これらの技術がもたらす利便性・安全性と引き換えに、ある程度の個人情報の放棄を認めているとの調査結果もある。だが、指紋や顔認証による生体認証データの蓄積が進んできたことから、状況は変化している。

 浙江(Zhejiang)省杭州(Hangzhou)にある浙江理工大学(Zhejiang Sci-Tech University)の教授である郭兵(Guo Bing)氏が、サファリパーク「杭州野生動物世界(Hangzhou Safari Park)」を訴えたことに対する国民の反応は、法的予防策が整備される前に顔認証などの技術使用が拡大していることへの不安の表れだ。

 中国版ツイッター(Twitter)の「微博(ウェイボー、Weibo)」では、この訴訟に関連した投稿に1億以上のアクセス数があるが、多くのユーザーは、個人情報収集の禁止を求めている。こうした意見は、中国で金融詐欺や携帯電話番号の流出、フィッシング詐欺など、個人情報の侵害が横行している現状に一因がある。

 裁判の日程は分かっておらず、郭氏の直接のコメントは得られなかったが、同氏は、自身の民事訴訟において、顔認証などのデータ収集は「それが流出するか、不法に提供または侵害された場合、消費者自身とその資産の安全性が簡単に脅かされてしまう」と主張している。

 科学技術省は同省の広報誌で、サファリパークのやり方は性急かつ乱暴で、国民感情に無関心なことを表していると述べている。