【12月20日 AFP】私がケニアのその土地を訪れたのは、気候変動がはるか辺ぴな地域の共同体に与えている影響を示す写真を撮るためだった。だが、私がそこで記録することになったのは、人間の尊厳だった。

ケニア・トゥルカナ郡ロドワル近くの乾燥地域で、農耕具を持ちモロコシ畑に向かう地元の女性(2019年10月1日撮影)。(c)AFP / Luis Tato

ケニア・トゥルカナ郡ロドワル近くの乾燥地域で、シュロの葉を頭に載せ家路につく地元の女性(2019年10月1日撮影)。(c)AFP / Luis Tato

 われわれは、気候変動が現地の共同体と難民らにどのような影響を与えているかを取材するため、国連(UN)のスタッフとトゥルカナ(Turkana)地域に出向いた。ここには二つの大規模な難民キャンプがあり、情勢が不穏なソマリア、南スーダン、コンゴ民主共和国から逃げて来た人々が暮らしていた。もちろん、地元トゥルカナの人々の故郷でもあり、また、過酷な気象条件の地でもある。

ケニア・トゥルカナ郡ロドワル近くの乾燥地域で、かんがい用水路の障害物を取り除く地元の人々(2019年10月1日撮影)。(c)AFP / Luis Tato

 この地域はいつも非常に暑く、雨はほとんど降らない。年ごとに降雨量は減っている。そのため、水不足がここに住む人たちが対処しなければならない問題の一つなのだ。

ケニア・トゥルカナ郡ロドワル近くの乾燥地域で、かんがい用水路沿いを歩く地元の人々(2019年10月1日撮影)。(c)AFP / Luis Tato

 もう一つの問題は、インフラと政府からの援助がないことだ。ケニア経済は現在、好景気にあるが、インフラと政府のサービスでは、首都ナイロビとそれ以外の地域には巨大な格差がある。北部では、その格差が特に大きいことが実感できる。道路は極めて劣悪で、電話回線も悪く、まともなインフラもない。こういう状況の真っただ中で、極端な貧困と極端な気候に直面しているのだ。

ケニア・トゥルカナ郡モルンゴレで、息子の顔についた汚れを取る地元の女性(2019年10月4日撮影)。(c)AFP / Luis Tato

 そのため、ここに住んでいる人々は、自分たちに世界の注目、とりわけ政府の注目を引き付けようとしている。

 私が本当に驚いたのは、この過酷な条件にもかかわらず、人々が力を合わせているその水準の高さだった。現地の共同体の人々は水ポンプ造りのために身を粉にして働いている。一部の共同体では炭を作りそれを売って暮らしを立てている。私が目にしたのは、威厳を持って厳しい条件下で一生懸命に働いて生計を立て、きちんとした生活を送り、自らと家族のためにより良い未来を創っている人々だった。この人たちは、伝統や慣習と強くつながっている。

ケニア・トゥルカナ郡モルンゴレの乾燥地域で、早朝の蓄牛放牧前に集まった地元の人々(2019年10月3日撮影)。(c)AFP / Luis Tato

 そのことは私にとって大きな衝撃だった。おそらくそれは世界中どこでも見られる一般的な人間の状況なのだろう。人々は、自らの子どもたちのより良い未来のために悪戦苦闘する。私はスペイン出身だが、私がここにいるのは、スペインで働いていた新聞を一時解雇となり、労働状況があまり思わしくなかったからだ。そのため、世界の中の、この地域に来ることにしたのだ。

ケニア・トゥルカナ郡モルンゴレの乾燥地域で、早朝に家路につく、地元の年配の男性(2019年10月3日撮影)。(c)AFP / Luis Tato

ケニア・トゥルカナ郡モルンゴレの乾燥地域で、早朝に布を身にまとい、自宅の前に立つ子ども(2019年10月3日撮影)。(c)AFP / Luis Tato

 だがスペインではインフラは強固で、政府の援助もある。スペインのような国では、政府や各機関の存在はずっと明らかだ。だが、ここトゥルカナ地域では、それらの存在はほとんど目に見えない。

ケニア・トゥルカナ郡モルンゴレの乾燥地域で、早朝に蓄牛を連れて家路につく牛飼い(2019年10月3日撮影)。(c)AFP / Luis Tato

 私にとっては、畑仕事をする女性の写真が、この状況すべてを物語っている。この女性は難民で、非常に過酷な条件下で自国を去って来た。彼女の全財産は、この小さな一画の土地と若干の作物だ。彼女がとても困難な状況で働いているのは、自らと家族のために最善を求めているからだ。

このコラムはケニア・ナイロビを拠点に活動するフォトグラファー、ルイス・タト(Luis Tato)氏が、パリ本社のヤナ・ドゥルギ(Yana Dlugy)記者と共同執筆し、11日21日に配信された英文記事を日本語に翻訳したものです。

ケニア・トゥルカナ郡のカロベイエイ難民居住区にある自分の畑で、子どもを背負い農作業をする南スーダン出身の難民の女性(2019年10月2日撮影)。(c)AFP / Luis Tato