【12月16日 AFP】ドイツの連邦憲法裁判所で史上初めて、子ブタを原告とした裁判が行われている。雄の子ブタを麻酔なしで去勢する慣習を禁止するよう求め、動物愛護団体が起こした訴訟だ。

 性成熟期に達した雄ブタの肉は、調理したり食べたりしたときに『雄臭』を発することが多い。雄の子ブタを生後数日で去勢するのは、豚肉の雄臭を防ぐために必要な処置だと養豚農家は主張している。

 ただ、欧州では痛みを伴う去勢手法への批判が高まっており、スウェーデン、ノルウェー、スイスでは既に禁止されている。

 ドイツ連邦議会も2013年に鎮痛処置なしの去勢を違法とする法案を可決したが、新法の適用には5年間の移行期間を設置。さらに昨年、移行期限を2021年まで延長した。

 法施行の遅れにしびれを切らした動物愛護団体「動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)」は11月、生まれたばかりの子ブタたちを原告として、連邦憲法裁に訴訟を提起。ブタにも人間と同様に「権利」があり、麻酔なしの去勢という「残酷な行為」は権利侵害に当たると主張している。

 PETA支持者で子ブタたちの代理人を務めるコルネリア・ツィーム(Cornelia Ziehm)弁護士は、「企業や協会などの法人は、人ではないが、法人格を有する。それならば動物にも法人格を認めるべきではないか」と法廷で論じた。

 PETAは、ドイツの法律では妥当な説明なしに動物を傷つけることはできないと主張している。焦点となるのは、ドイツでは「誰も」が──たとえブタであっても──基本的権利を侵害されたと感じたなら、連邦憲法裁に訴え出ることができるという解釈の是非だ。ただ、法律の専門家からは、動物には「生得の権利」はないとの指摘も出ている。(c)AFP/Florian CAZERES