【12月15日 AFP】スーダンで長年にわたって強権支配を敷いた末、今年4月に失脚したオマル・ハッサン・アハメド・バシル(Omar Hassan Ahmed al-Bashir)前大統領(75)に対し、同国の裁判所は14日、汚職の罪で禁錮2年の実刑判決を言い渡した。バシル被告は複数の罪で訴追されているが、判決が下されるのはこれが初めて。年齢を考慮し、バシル被告は高齢者の更生施設に収監される。

 裁判所はこのほか、バシル被告の自宅で見つかった現金690万ユーロ(約8億4000万円)、35万1770ドル(約3800万円)、570万スーダン・ポンド(約1400万円)の押収も命じた。

 スーダンでは昨年12月からバシル被告の強権政治に抗議する民衆による大規模デモが繰り広げられ、今年4月に軍がバシル被告を解任し身柄を拘束していた。

 バシル被告はスーダンの白い民族衣装「ジャラビーヤ」とターバン姿で、被告用のおりに入れられて出廷。サウジアラビアの複数の指導者から合計9000万ドル(約98億4000万円)を受け取ったことを認め、裁判の焦点は、事実上サウジの最高権力者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子(Crown Prince Mohammed bin Salman)から被告が受け取った2500万ドル(約27億円)に当てられた。

 バシル被告は、自宅から押収された現金は、スーダンとサウジの戦略的関係の一環としてサルマン皇太子から受け取った2500万ドルの一部だと説明。使途については「私的な使用目的ではなく、寄付のためだ」と主張した。

 被告側弁護団のアハメド・イブラヒム(Ahmed Ibrahim)氏によると、バシル被告は判決を不服として控訴する意向。

■ダルフール紛争での役割でも捜査

 バシル被告に関しては、スーダン検察当局も14日夜、2000年代に入ってから民族対立が武力衝突に発展し紛争地となったダルフール(Darfur)、南コルドファン(South Kordofan)、青ナイル(Blue Nile)における「殺人と人道に対する罪」で、バシル被告を捜査していると明らかにした。

 2003年に起きたダルフール紛争では、スーダン西部ダルフール地方の少数派非アラブ系住民とアラブ系政府との対立が本格的な武力衝突に発展した。

 バシル被告にはダルフールにおけるジェノサイド(大量虐殺)、戦争犯罪、人道に対する容疑で2009年に国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ている。スーダン検察の捜査はこれとは別のものだが、発表した同国紛争地域における同被告の犯罪容疑はICCのものとかなりの部分で重なる。

 これに加えてスーダン検察は、バシル被告が大統領の座に就いた1989年のクーデターにおける同被告の役割についても捜査していると明らかにした。有罪となった場合は、絞首刑に相当する容疑も含まれているという。(c)AFP/Abdelmoneim Abu Idris Ali and Emmanuel Parisse