【12月13日 AFP】クリント・イーストウッド(Clint Eastwood)監督の実話を基にした最新作『リチャード・ジュエル(Richard Jewell)』で、女性記者が情報と引き換えに「枕営業」をする描写があり、論争を招いている。実在の記者が所属していた新聞社側は、「衝撃的」で「真実ではない」描写をめぐり法的手段をとる姿勢も見せている。

 同作は、1996年アトランタ五輪での爆破事件の容疑者とされ、メディアの過熱報道に打ちのめされた無実の男性、リチャード・ジュエル氏を描く。

 当時警備員だったジュエル氏は、パイプ爆弾を発見して英雄扱いされた。しかし間もなくして、アトランタ・ジャーナル・コンスティテューション(AJC)紙のキャシー・スクラッグス(Kathy Scruggs)記者らが、米連邦捜査局(FBI)がジュエル氏を容疑者とみていることを突き止めた。

 劇中には、米女優オリヴィア・ワイルド(Olivia Wilde)演じるスクラッグス記者が、容疑者の身元情報を得ることと引き換えにFBI捜査官と性的関係を持つ場面がある。

 これについてAJCの編集者、ケビン・G・ライリー(Kevin G. Riley)氏は、「わが社の記者の描写は衝撃的であり、真実ではない」と述べ、明らかに映画のために脚色されたものだとAFPに述べた。

 AJCの親会社、コックス・エンタープライズ(Cox Enterprises)は9日、イーストウッド監督と米映画大手ワーナー・ブラザース(Warner Bros)に書簡を送り、場面の一部が脚色されたものであることを正式発表するよう要求した。

 コックス・エンタープライズは書簡で、AJCとその従業員が「中傷的な方法で誤って描かれている」と訴えている。

 映画には現在、「歴史的事実に基づく」との注意書きが添えられているが、クレジットの最後の最後に、「演出のために」せりふや場面の一部が付け加えられたとの説明がある。

 ライリー氏は「このような説明は、観客に真の状況を知らせることを真剣に考えた映画監督による説明には見えない」と指摘した。

 これに対してワーナー・ブラザースは、同作が「広範囲にわたる信頼性の高い情報源」に基づいていると主張。ジュエル氏が疑われていると真っ先に報じたメディアの一つであるAJCが「映画の制作陣とキャストを中傷しようとしているのは残念であり、結果的に皮肉なことだ」と述べ、「AJCの訴えには根拠がなく、われわれは断固として対抗していく」とした。(c)AFP/Andrew MARSZAL