【12月9日 AFP】世界反ドーピング機関(WADA)は、組織的な検査データ改ざんが認定されたロシアに対して、9日の常任理事会で新たに4年間の追放処分を科すとみられる。

 処分が決定すれば、ロシアの選手が世界の舞台で戦うことに加え、あまり人気のないスポーツにとってはありがたい場所だったロシアが、サッカーとフォーミュラワン(F1、F1世界選手権)を除いたスポーツの国際大会を主催するのは難しくなる可能性が高い。

 ここではWADAの処分がロシアに与える影響を具体的に見ていく。

■選手への影響

 ロシアは今後4年間、夏季と冬季の五輪とパラリンピックから国としては追放される。つまり2020年東京五輪と2022年北京冬季五輪へ選手団を正式に派遣することはできなくなり、選手は薬物違反に関する疑惑を取り除いた上で、「中立」の立場で出場しなければならない。2018年の平昌冬季五輪では、このルートで168人のロシア選手が15競技に参加した。

 他には、2020年のローザンヌ冬季ユース五輪、2022年のダカールユース五輪にもロシアは国としては出場できない。欧州競技大会(European Games)やユニバーシアード(Universiade)といった複数競技の国際大会や、国際オリンピック委員会(IOC)をはじめ、WADAの世界アンチ・ドーピング規程に署名している団体が主催する世界大会からも除外される。

 ロシアの選手と指導者は、同国で2011年から2015年にかけて行われていた国家ぐるみのドーピング違反と無関係だということを示せた場合のみ、こうした大会への出場を認められる。無実が証明できた場合は、こちらも中立での出場となる。

 また、大統領を含めたロシア政府の関係者や代表、ロシア五輪委員会(ROC)、パラリンピック委員会(RPC)の幹部も、こうした大会への出席は禁止される。

■大会開催への影響

 今後4年間、ロシアはここまでに挙げた各大会を主催したり、開催に名乗りを上げたりすることはできなくなる。特に2032年の夏季五輪については、4年間で開催国が決まるかどうかに関係なく、立候補自体ができない。

 また、4年の間にロシアで開催されることがすでに決まっている国際大会についても、WADAは「法律、実地の両面で難しい」と話しており、開催の撤回か、開催地の変更が求められるとみられる。

 大きなものとしては、2022年のバレーボール男子世界選手権(FIVB Volleyball Men's World Championship)と、クラスノヤルスク(Krasnoyarsk)で開催が予定されているレスリング世界選手権(UWW World Wrestling Championships)、2023年夏にエカテリンブルク(Yekaterinburg)で開催される予定の夏のユニバーシアードがある。計画の見直しを望まない主催団体があるかはまだ分からない。

 影響を受けない大会もある。例えば2020年サッカー欧州選手権(UEFA Euro 2020)の準々決勝を含めた4試合、2021年の欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League)決勝は、すべてサンクトペテルブルク(St. Petersburg)で行われる。WADAは先月、これらが「主要大会でも世界選手権でもなく、地域/大陸の単一競技の大会」であることを理由に実施を認めた。

 同様にソチ(Sochi)で行われているF1のロシアGP(Russian Grand Prix)など、世界を転戦するシリーズの一部に組み込まれている大会も、例外的に実施が認められる。

■関係者への影響

 ロシア政府の関係者が、世界アンチ・ドーピング規程に署名している団体で働いたり、そうした団体に所属したりすることもできなくなる。つまり、実質的にすべてのスポーツ団体からロシアの公人は排除される。

 一方で、政府や大統領府を正式に代表するわけではない一般市民に対しては、扉は開かれている。国際柔道連盟(IJF)の名誉会長を務めるウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)氏もこれに含まれるかについては、現時点では不明となっている。(c)AFP