【12月8日 AFP】正気じゃない? それとも、バナナがあまりにおいしそうだったから? 米フロリダ州マイアミビーチ(Miami Beach)で7日、現代美術展「アートバーゼル(Art Basel)」に出展されていた芸術作品のバナナをパフォーマンスアーティストの男性が食べてしまった。

 このバナナはイタリア人アーティスト、マウリツィオ・カテラン(Maurizio Cattelan)氏による「コメディアン(Comedian)」と名付けられた作品で、フランス人の収集家が12万ドル(約1300万円)で購入していた。

 バナナを食べたのは、ニューヨーク在住の自称ジョージア出身米国人アーティスト、デービッド・ダトゥナ(David Datuna)氏。ダトゥナ氏が自身のインスタグラム(Instagram)で公開した動画には、ダクトテープで壁に張られていたバナナをダトゥナ氏がテープごと引きはがす様子が映っている。ダトゥナ氏は驚がくしている大勢の人たちに向かって「空腹なアーティストによるアートパフォーマンスです」と言うなりバナナの皮をむいて1口食べ、「どうも。とてもおいしいですね」と感想を述べた。

 見物人から笑い声ももれる中、美術展のスタッフが大慌てでやって来てダトゥナ氏を連れ去った。別室でダトゥナ氏がスタッフに事情を聞かれる様子も映っている。

 結局、この騒動は大事に発展することなく解決した。ギャラリー・ペロタン(Galerie Perrotin)の美術館担当、ルシアン・テラス(Lucien Terras)氏は地元紙マイアミ・ヘラルド(Miami Herald)の取材に「彼は芸術作品を破壊したわけではありません。あのバナナは概念なのです」と述べている。

 同紙によれば問題の作品はバナナの交換を想定して作られており、ダトゥナ氏がバナナを食べた15分後には新しいバナナが再び壁に張られた。

 テラス氏は「バナナの展示ブースは緊張や注目を集めることになったが、私たちの目的は大掛かりなショーではありません」と述べた上で、「反響はとても大きかったし、たくさんの人たちを笑顔にできました」と付け加えた。

 作者であるカテラン氏の作品で最も有名なのは、「アメリカ(America)」と題された18金製の「黄金の便器」だろう。カテラン氏はかつて、この「便器」の貸与をドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領に申し出ている。(c)AFP