【12月9日 AFP】韓国・ソウルの殺風景な政府庁舎で、放送監視機関のある部隊が毎日インターネットで閲覧しているのは、ポルノ動画だ。

 インターネット上に同意なく投稿された性的動画の摘発と削除を任務に、総勢16人から成るデジタル性犯罪監視部隊が今秋、韓国放送通信審議委員会(KCSC)により設置された。10月の時点で、24時間体制で職務に当たっている。

 スパイカメラ(隠し撮り用小型カメラ)による盗撮は「モルカ」と呼ばれ、学校やトイレ、その他の場所で、男性が女性を隠し撮りするケースが多い。

 監視部隊はまた、元パートナーに対して恨みを抱く元恋人や元夫、または悪意のある知人が、プライベートな性行為の動画を相手の同意なく撮影し流出させる「リベンジポルノ」も対象にしている。

 この種の犯罪に関与した著名人の一人に、人気Kポップ歌手のチョン・ジュニョン(Jung Joon-young)被告がいる。同被告は3月、複数の女性との性行為を相手の合意なしに撮影し、流布した容疑で逮捕された。同被告に対しては、検察側が禁錮7年を求刑している。

 この二つの現象は、インターネットの普及率が高い韓国で、ますます広がりを見せており、昨年はソウルで女性による数万人規模のデモが発生。女性たちは「私の人生はあなたのポルノではない」とのスローガンを叫び、当局に措置を求めた。

 監視部隊は対象の動画を探し出すために、ツイッター(Twitter)やユーチューブ(YouTube)を含めた国内外のプラットフォーム上で性行為を指す韓国語のハッシュタグを検索している。

 監視部隊は韓国のサイトに対しては疑わしい動画の削除を指示できるが、圧倒的多数は権限の及ばない外国サーバーをホストとしており、外国の運営者には、問題の動画の自主的削除を求めることしかできない。

 監視部隊は10月、1日平均82件の措置を取った。この専門部隊が設けられる以前の4年前と比べて、この数は8倍に急増した。時にはパニックになった被害者が自分で監視部隊のホットラインに連絡し、助けを求めてくることもある。

 監視部隊の責任者のイ・ヨンペ(Lee Yong-bae)氏は「最近では、ある被害者が、元交際相手が盗撮したセックス動画がアップロードされた100以上の異なったサイトのアドレスを示してきた」と語る。だが同氏は、ボタンを押すだけでインターネット上に拡散され共有されるために、動画の完全な除去は「不可能に近い」と認めた。

 KCSCの記録文書の中には、5月に初めて投稿されたスパイカメラの動画が、6か月後には2700以上のサイトに拡散したことを示すものもある。KCSCのミン・ギョンジュン(Min Kyeong-joong)事務局長は「われわれの使命は、最初の24時間内に拡散を封じ込めることだ」「被害者にとっては、毎秒が胸を締め付けられる瞬間だ」と語る。