【12月4日 AFP】食用作物の近縁種にあたる野生植物を、世界規模で調査するプロジェクト「作物の野生近縁種(Crop Wild Relatives)」の報告書が3日、発表された。調査チームは、コメ、イモ、ムギ、ピーナツなど約28種の食物の祖先種を調べ、世界25か国からさまざまな種子を収集した。

 人類は食物を得るため、約1万年にわたり野生植物を栽培化してきた。だが、その過程で野生植物の自然防御力の多くが失われ、食用作物および人間は潜在的に無防備な状態となっている。

 英ロンドンのキュー王立植物園(Royal Botanic Gardens, Kew)ミレニアムシードバンク(MSB)が実施する「作物野生近縁種プロジェクト」は、気候変動や病気に対する食用作物の防御力強化を目的としており、これまでに165種の標本種子約3300粒を配布している。

 同プロジェクトのコーディネーター、クリス・コッケル(Chris Cockel)氏は、「人間は相互依存的な世界に暮らしている。人間が必要とする多様性のすべてを有している国や地域は一つもない」「例えば食用作物の野生近縁種の一つが、アメリカ大陸、アフリカ、アジアにおける病虫害抵抗性の源になり、将来、全人類に利益をもたらす可能性もある」と述べている。

 人類が収穫率を高めようとしたことで、遺伝的多様性が犠牲となった。このため、地球温暖化や開発によってもたらされる特定の極端な気候条件や病害虫による影響を作物が受けやすくなったという。

 コッケル氏は「今や多くの国が、作物野生近縁種が栽培者らにとっていかに重要で、貴重であるかということに気付いている」と述べた。(c)AFP