【12月3日 AFP】イエメンで続く内戦によって、同国に住む450万人の障害者がとりわけ大きな打撃を受けていると警告する報告書を、国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)が発表した。

 国際障害者デー(International Day of Persons with Disabilities)に当たる3日に発表した報告書でアムネスティは、援助国や援助団体、国連(UN)機関などに対し、避難所にいる障害者の支援を強化するよう求めている。

 イエメンでは2015年以来、サウジアラビアを後ろ盾とする暫定政権と、イランを後ろ盾とするイスラム教シーア派(Shiite)反政府武装組織フーシ派(Huthi)による内戦が続いており、国連が世界最悪の人道危機と呼ぶ事態に陥っている。

 アムネスティの報告によると、戦闘からの避難を余儀なくされた障害者の多くは、混乱の中で松葉づえや車椅子を持ち出せないまま逃げてきた。最悪の場合、自宅から避難する際に家族と離れ離れになり、障害者自身が置き去りにされた例もあるという。

 アムネスティの報告書は、さまざまな障害のある老若男女53人の体験を記録。援助物資配給場所の仮設トイレなど、障害者にとっての「設計上の欠陥」を指摘し、そうした不備があるため「障害のある人々は家族や他人に頼らざるを得ず、独立性と尊厳を奪われている」と述べている。

 体を自由に動かせない75歳の男性はアムネスティの調査員に対し、仮設トイレまで息子たちに連れて行ってもらう必要があり、「息子たちは私を運ぶことができないから、引きずっていく」と訴えた。

 内戦とそれに伴う経済崩壊のせいで、イエメンの公的医療や社会福祉サービスは大打撃を受け、そのため「障害のある人々の権利保障が制度的に機能しなくなっている」とアムネスティは指摘。また、「多くの障害者が配給物資に頼り、自分でどうにかするしかない状態で、中には薬や成人用おむつといった必需品の支払いのために貧困に陥っている人もいる」「障害のある男性の一人は、道路沿いで物乞いすることを余儀なくされていた」と報告した。(c)AFP