【11月21日 東方新報】中国・河北省(Hebei)張家口市(Zhangjiakou)張北県(Zhangbei)にある張北クラウド産業基地が、京津冀(北京・天津<Tianjin>・河北)ビッグデータ総合実験区の心臓として機能していることが、11月11日「独身の日」に行われた大規模ネットショッピング取引で膨大なクラウド計算処理をこなしたことで証明され、注目を浴びている。 

 11月11日は中国における独身者デーとして、独身者向けの大規模なネットショッピングセールが天猫(Tmall)などの主要Eコマースサイトで打ち出され、例年兆円単位の取引が一日のうちに行われたが、その瞬時のデータ処理を担ったのが、この張北クラウド産業基地なのだ。

 産業基地は2012年10月から始動し、2017年には全国初のデータセンター産業モデル基地に指定された。Eコマースの雄、阿里巴巴集団(アリババ・グループ・ホールディング、Alibaba Group Holding)は、この基地に5つのデータセンターを建設し、総額200億元(約3095億円)以上を投じて38万台のサーバーを置ける施設をつくり、2016年の運用開始からすでに24万台のサーバーが稼働している。

 にわかに注目を浴びる張北の地だが、この地域はもともと内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)高原の最南端、黄砂の吹き荒れる平均海抜1400メートルの中国有数の貧困地域でもあった。なぜこんな辺鄙な土地に最先端のデータセンターが設置されたのか。それは、10月からマイナス13度という厳しい寒さと関係がある。

 年平均気温3.2度、大量のサーバーが出す高温熱を天然の冷蔵庫がさましてくれる。この寒さがなければ、サーバーを冷やすための冷房費がばかにならなかっただろう。また北緯41度という「黄金緯度」であり、風力、太陽光とも豊富で、風力、太陽光エネルギーといったクリーンな電力供給源にも恵まれている。

 高度10メートルの地点での年平均風速は1秒あたり6.2メートル。年平均2400時間、風力を利用できる。国家八大風力発電基地の一つが作られているゆえんだ。また日照時間は2989時間で全県の太陽光発電資源は600万キロワットと推計されている。

 張家口市は「政府+ネット+発電企業+ユーザー」の4者協力電力価格メカニズムを打ち立てており、これまで送電ロスなどで無駄にしてきた風力・太陽光電力を低コスト経済電力に利用可能としている。こうしたことから、大規模データセンターのコストも大きく節約できている。

 いまのところ、張北県のクラウド計算産業基地は全体の4分の1弱の開発が済んでいる。すでに5つの運営プロジェクトと1つの建設プロジェクトが完了。ここに登録している関連企業は25社で、年末には稼働サーバーは30万台に上るだろう。この中には青島通産偉博ビッグデータ運営や北京京糧置業などが調印した18のデータセンタープロジェクトが含まれる。

 さらに中国移動(チャイナモバイル、China Mobile)など20社以上の企業が契約プロセスにあり、こうした大企業が集中することによって張北クラウドの産業ブランドとしての効果も日ましに上がっている。北京冬季五輪が開催される2022年には、50万台のサーバーが稼働し、産業規模は400億元(約6189億円)以上になる。今後5年内に、アリババは北方地域のクラウドサービスを張北に8割以上を集中させていく予定という。おそらく直接営業収入は300億元(約4642億円)を下らないとみている。

 極寒の荒れ地に、わずか数年で国内外の先端技術、資金、人材が一気に流れ込み、情報を満々にたたえる「中国ビッグデータダム」に生まれ変わったことは、中国のIT・ビッグデータ産業の明るい将来を指し示す象徴的な成果かもしれない。 (c)東方新報/AFPBB News