【11月15日 AFP】経済協力開発機構(OECD)は14日、大量の抗生物質、鎮痛薬、抗うつ剤から生じる残留物が、淡水生態系や地球の食物連鎖に重大な危険をもたらしているとする報告書を発表した。OECDは、世界各地で採取した水サンプルに含まれる医薬品残留物の濃度に関するデータと、世界各国の薬剤処方の傾向や水質規制を比較分析した。

 医療と農業の両分野で、このまま抗生物質が無制限に使用されると、自然環境と人間の健康に悪影響が及ぶ事態は避けられなくなる。

 動物や人間が薬剤を摂取すると、有効成分の最大90%が自然環境に排出される。また、破棄される薬剤も多い。米国だけでも毎年、40億に上る処方薬の3分の1が最終的に廃棄されていると推定されている。

 さらに家畜に使われる抗生物質の使用量は、今後10年で67%以上増えることが予測されており、抗生物質耐性が懸念されるとOECDは指摘している。人が使う処方薬も大幅に増加するという。

 報告書の主執筆者ハンナ・レッキー(Hannah Leckie)氏は、現代は新薬開発が絶え間なく行われている他、臨床診療では早期治療と薬の大量投与が勧められると指摘する。さらにレッキー氏は「医薬品残留物は世界中の地表水と地下水で検出されている」「その発生についてはいまだ不明な点が多く、濃度についてもほとんど分かっていない」と述べた。

■気候変動との関連も

 薬剤耐性感染症による死者は、毎年70万人以上に上っている。世界人口の増加と高齢化、薬剤の処方率の上昇に伴い、2050年前までに同死者数は年間1000万人に達するのは確実だとされている。この数はがんによる死者数を上回るものだ。

「高齢化、医学の進歩、食肉と魚肉の生産拡大によって、世界中で医薬品の需要が高まっている。残留医薬品の危険を管理する適切な措置が講じられなければ、医薬品残留物の自然環境への放出は増え続ける」と報告書は述べている。

 また、気候変動によってマラリアやデング熱などの感染症が拡大し、発症数も増加していることから、状況は確実にさらに深刻化する。レッキー氏は、医薬品の処方と気候関連疾患にはある種の悪循環が存在すると指摘する。

「人口(増加)や輸送など人間の活動と気候変動が結びつくと抗菌薬耐性が高まり、(中略)その結果さらに多くの医薬品が必要となる」 (c)AFP/Patrick GALEY