【11月12日 AFP】地球温暖化を原因とする北極圏の海氷の減少により、ホッキョクグマなどの動物がこれまでこの地域には存在していなかった病原体にさらされている可能性があることが分かった。研究結果は7日、英科学誌ネイチャー(Nature)系列のオンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に掲載された。

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 米カリフォルニア大学デービス校(University of California, Davis)のトレイシー・ゴールドスタイン(Tracey Goldstein)氏が主導する研究チームは、2004年に米アラスカ州沖で発見されたラッコが、2002年に北大西洋でゼニガタアザラシの大量死を引き起こしたアザラシジステンパーウイルス(PDV)に感染していたことを確認した。

 PDVがアラスカ沖までたどり着いたのは、北極海氷の縮小によりロシアおよびカナダ北部沿いに新たな通路ができ、この通路を通じて動物や病原体が移動した可能性が最も高いという。論文では「海氷減少は動物の行動を変化させ、物理的障壁を取り払うことで、北極に動物と感染症が入ってくる新たな通路を形成した可能性がある」と指摘している。

 北太平洋海域における動物のPDVへの暴露と感染は2003年に始まり、同年ピークに達した。また、2009年にも再びピークに達している。論文によると、PDVへの暴露と感染のピークは、北極の海氷面積の減少後に起こっているという。

「北極海氷を通る通路の開放とPDVへの暴露または感染増加との関連性は、PDVなどの病原体が北太平洋と北大西洋の海洋哺乳類の個体群間を移動する機会が増える可能性があることを示唆している」と論文では結論付けている。(c)AFP