【11月5日 AFP】米航空宇宙機器大手ボーイング(Boeing)は4日、米国人宇宙飛行士を乗せて国際宇宙ステーション(ISS)との間を往復することになるカプセル型有人宇宙船「スターライナー(Starliner)」の打ち上げ実験を行った。ボーイングは非常時を想定したこの実験で、着地の際にメインパラシュート(主傘)3本のうちの一つが開かなかったにもかかわらず実験は成功したと述べた。

 約95秒間の実験は、ニューメキシコ州の砂漠にあるホワイトサンズ・ミサイル実験場(White Sands Missile Range)で行われた。

 実験では、緊急時に宇宙飛行士らを安全に地上に帰還させるために、スターライナーを搭載ロケットから素早く分離させなければならない事態を想定。スターライナーは四つのエンジンを備えた小型の発射台に設置され、勢いよく打ち上げられたが、20秒後に開いたメインパラシュートは3本のうち2本だけだった。その後、スターライナーはゆっくりと下降し、大きなエアバッグが置かれた砂漠の上に着地した。

 米航空宇宙局(NASA)は、パラシュートが2本しか開かなかったことは「実験パラメーターと宇宙飛行士の安全確保の点で許容範囲内にある」との見解を発表した。

 一方、ボーイングは声明で「パラシュートの展開時の異常であり、故障ではない」と述べた。航空宇宙産業では、「異常」という言葉はしばしば事故のえん曲表現であり、深刻な事故の場合でもこの表現を使うことがある。だがボーイングは「メインパラシュート3本がなぜ同時に展開しなかったのか、原因を断定するには早すぎる」としている。

 米国が2011年にスペースシャトル(Space Shuttle)計画を終了して以降、ISSに宇宙飛行士を送ることができるのは、ロシアの宇宙船「ソユーズ(Soyuz)」だけとなっている。

 そうした中、NASAではISSへの有人飛行船の建造を行う企業に、ボーイングと米宇宙開発企業「スペースX(SpaceX)」を選定した。NASAは、初の有人飛行は2020年に行うとしているが、そのスケジュールが実現するか否かは今後いくつかの実験の成功にかかっている。

 ボーイングは今後12月17日にスターライナーをISSに無人で発射する計画。スペースXのカプセル型宇宙船「クルー・ドラゴン(Crew Dragon)」は今年3月、すでに同内容の実験を行っている。一方、スペースXはカプセル型宇宙船のパラシュート実験をまだ完了していない。

 映像はスターライナーの実験、NASA TVが4日撮影・提供。(c)AFP/Ivan Couronne