【10月22日 AFP】先週始まった反政府デモに揺れるレバノンで21日、サード・ハリリ(Saad Hariri)首相がテレビ演説を行い、政府が承認した経済再生計画を発表した。

 再生計画は2020年の予算案と大幅な改革を含むもので、1週間前には予想もできなかった内容。だが、デモは世襲のエリート層が支配する政界全体の刷新を求めて拡大しており、土壇場の改革案には強い不信感が示されている。

 ハリリ首相は、国営企業の民営化や増税の撤回、閣僚給与と議員報酬の半減を決めたことなど、計画の詳細を説明。さらに、政府は今後3週間で、昨年決まった110億ドル(約1兆2000億円)の国際援助を財源とするインフラ事業の第1弾を承認すると述べた。

 だが、自身も元首相を父に持つハリリ首相は、「この決定は交換条件として立案されたものではない。これによって怒りを示すことをやめるよう求めるわけではない。皆さんが判断すべきことだ」と発言。計画が国民の変革への欲求を満たせないことを自覚している様子を見せた。首相はまた、デモの主な要求事項である早期の選挙実施を支持した。

 一方、デモ参加者の間では、発表された再生計画によって腐敗したエリート層が職にしがみつこうとしているとの受け止め方が多く、21日現在、抗議が収束する気配はほとんど見られない。

 デモは17日に始まって以降、政治姿勢や宗派を超えた大衆運動へと発展し、数万人が参加。レバノンでは、30年前に終結した内戦の軍閥指導者が依然として権力層の大勢を占めており、デモの参加者らはそうした派閥的な体制の全面的な刷新を求めている。

 デモの規模の大きさに比べ、付随する事件はこれまで5日間で著しく少ない。街頭では、ボランティアがまとまって清掃に当たっているほか、参加者に水を配ったり、応急救護のためのテントを設営したりしている。(c)AFP/Layal Abou Rahal and Joe Dyke