【10月16日 AFP】米航空宇宙局(NASA)は15日、米首都ワシントンの本部で、次世代宇宙服2種類の試作品を公開した。2024年までの実施を目指す有人月面着陸計画「アルテミス(Artemis)」で使う予定。

 公開されたのは、船内用の宇宙服「オリオン乗員生命維持システム(OCSS)」と船外活動用の与圧服「船外探査移動ユニット(xEMU)」。

 発表は巨大な米国旗が飾られたホールで行われ、宇宙服担当技術者のクリスティーン・デービス(Kristine Davis)氏が赤、青、白のxEMUを着て登壇。腰、腕、脚の部分のベアリング機構により、可動域が大幅に広がったことを説明した。

 xEMUは延長・短縮が可能で、1サイズだけですべての宇宙飛行士が着用できる。NASAは今年3月、女性宇宙飛行士のみの船外活動を計画していたが、Mサイズの宇宙服が足りなかったために中止せざるを得なかった。新型の宇宙服であれば、同様の失態は起こらない。

 NASAのジム・ブライデンスタイン(Jim Bridenstine)長官は、会場に詰め掛けた学生やNASAの研修生らを前に「アポロ計画の時代を思い出してみると、(アポロ11号船長)ニール・アームストロング(Neil Armstrong)と(同飛行士)バズ・オルドリン(Buzz Aldrin)が月面をウサギのように跳ねる姿が頭に浮かぶ」と述べ、「今や月面を歩くことができる。これは過去の宇宙服と大きく違うところだ」と説明した。

 ほかにもxEMUでは、呼吸で生じる二酸化炭素の処理で重要な進歩があった。二酸化炭素は大量に蓄積すると人体に有害だが、新型ではこれを無制限に吸収できる。

 従来の仕組みは吸収しかできないために飽和量までしか処理できなかったが、新たな仕組みでは吸い取った二酸化炭素を宇宙空間に排出することで無制限の吸収が可能となった。

 一方、OCSSは、隕石によって宇宙船の船体に穴が開いた場合など、必要に応じて最長6日間、乗員の生命を維持できるよう設計されている。

 アルテミス計画では、月の南極に着陸し、2009年に観測された凍った水を採取することを目指している。水と氷は乗員の生命維持に使われるほか、水素と酸素に分離した上でロケットの推進力とする。

 NASAは長らく月面着陸を実施してこなかったが、アルテミス計画は2030年代の有人火星探査を実現するための土台になると考えている。(c)AFP