【10月15日 AFP】シリア政府軍は14日、対トルコ国境地帯に進軍し、戦略的要衝のマンビジ(Manbij)市内に入った。シリア北部では先週からトルコ軍がクルド人勢力を攻撃し、死者が発生。一方、米軍は批判を受けながらも一帯からの撤退を始めようとしている。シリア軍の動きは、トルコをけん制するとともに、米軍撤収による空白を埋めるためのもの。

 シリア政府軍は2011年の内戦勃発以降、クルド人が支配する同国北東部カミシリ(Qamishli)、ハサカ(Hasakeh)に駐屯。クルド人部隊の要請に応じ、昨年には要衝のマンビジ付近に限定的に兵力を展開している。

 政府軍が2012年に一帯から撤退を始めていたが、マンビジ市内をはじめとする新たな地点への兵力の配置は、政府側部隊の同地への再配備を示す動き。バッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領はシリア全域の支配を取り戻すと宣言しており、今回の動きは同大統領にとって大きな成果でもある。

 クルド人はシリア北東部で自治を維持してきたが、兵力で劣勢に立ち、米国の支援も受けられない中、トルコ軍と国内の親トルコ勢力による急速な進軍を阻止する手段は政府軍を受け入れる以外はほとんどなかった。

 クルド人勢力は、シリア政府が反体制派との戦いに焦点を絞るため一帯から撤退した後、米政府と協力関係を結び、一方的に自治を宣言。それ以降、クルド人とシリア政府の関係は冷え込んでいたが、シリア情勢で最大の仲介者となっているロシアは米軍撤退による空白をつき、直ちに両者の合意をまとめた。

 AFP特派員によると、シリア政府軍は14日早朝、対トルコ国境まで数キロ以内の地域に進軍した。(c)AFP/Delil Souleiman