【10月15日 AFP】熱ストレスで死滅したと考えられていたサンゴの回復が初めて確認された。気候変動の脅威にさらされている世界のサンゴ礁にとって希望の光となる発見だ。研究論文が先週、米科学誌サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)に掲載された。

 サンゴの回復を確認したのは、独ベルリン自由大学(Free University of Berlin)とスペイン・バルセロナ大学(University of Barcelona)に所属するディエゴ・ケルスティンク(Diego Kersting)氏。地中海西部、スペイン沖にあるコルンブレテス諸島(Columbretes Islands)で行われた潜水調査中にこの現象を偶然発見したという。

 ケルスティンク氏と論文の共同執筆者のクリスティーナ・リナレス(Cristina Linares)氏の研究チームは2002年より、絶滅危惧種に指定されている造礁サンゴのCladocora caespitosa(学名)のコロニー(群体)243か所の長期観察を実施している。この調査に基づく過去の論文で研究チームは、温暖化に関連するサンゴの大量死が繰り返し発生していると報告していた。

 サンゴは熱波によって死に至る。生きたまま高温にさらされて死ぬか、または共生藻を放出して白化現象を引き起こすことで死に至る。サンゴの体内に生息する共生藻はサンゴに栄養を供給する。コルンブレテス諸島周辺の海底を覆うサンゴは、2003年の猛暑による熱ストレスを受けて全体の4分の1が失われた。

■時間切れ迫る

 だが研究チームは今回、影響を受けたコロニーの38%でポリプが元の骨格を部分的に放棄してサイズを縮小した後、数年かけて徐々に再成長し、新たな骨格を形成し始めているのを確認した。サンゴは、ポリプと呼ばれる微小生物が無数に集まってできており、ポリプが分泌する炭酸カルシウム(石灰)の硬い外骨格で海底に固着する。

 サンゴが死滅した領域では、無性生殖の出芽によってポリプが再びコロニーを徐々に形成することができたという。

 再形成されたコロニーが有性生殖で生まれた新しいサンゴではなく、実際に同じポリプが「返り咲き」したものであることを確認するため、研究チームは3Dコンピューター画像処理技術を用いて、放棄された古い骨格が新しい骨格とつながっているのを確かめた。

 この「再生」プロセスをめぐっては、化石記録に残っていることが知られていたが、現存するサンゴ群体で観察されたのは今回が初めてだ。

 しかし、これらのサンゴの成長速度は年間3ミリ程度と非常に遅い。ケルスティンク氏は、「隔年の夏に熱波が起きるとすると、造礁サンゴの面積10~15%が死滅する」と説明する。そして、この再生プロセスだけでは足りないとしながら、「サンゴは人の助けを必要としている。人類は気候変動に歯止めをかけなければならない」と続けた。(c)AFP/Issam AHMED