【10月13日 AFP】世界的に絶大な人気を誇る韓国のヒップホップボーイズグループ「BTS(防弾少年団)」が11日、初のサウジアラビア公演を行った。近年、サウジアラビア政府は超保守的国家のイメージからの脱却を目指そうとしている。

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 会場となった首都リヤドのキング・ファハド国際スタジアム(King Fahd International Stadium、収容人数7万人)は、国内外から訪れたファンたちであふれ、BTSのメンバー7人が歌い踊るとスタジアムは若いファンたちの歓声と熱気に包まれた。

 頭からベールを緩めにかぶった若いサウジ女性のアミラさんは、「BTSが初めてサウジアラビアに来てくれて、本当にうれしい」とAFPに話し、「こんなコンサートが、これからもっと増えてほしい」と期待を示した。

 別のサウジ女性は匿名を条件に、サウジアラビアがポップ音楽に開かれた国になるのがうれしいと語った。女性はBTSの大ファンで、BTSに「個人的に心を動かされた」という。

 サウジアラビアは、石油に依存した経済の多角化を目指した計画を広範囲にわたって進めている。国のイメージ改善を図って観光客を誘致する計画もその一つで、その一環として数十年前から続いてきた娯楽規制も緩和された。

 サウジアラビアで公演を行うというBTSの決断は、多くの人たちに歓迎された。だが一方で、度重なる人権侵害に加え、反体制派や同性愛者を迫害し批判されてきたサウジアラビアで、BTSが公演を行うことを非難する声もある。

 サウジ政府はアーティストらに公演の場を積極的に提供しているが、人権問題をめぐる同国の経歴から、サウジと距離を置こうとするミュージシャンも少なくない。米ラップ歌手のニッキー・ミナージュ(Nicki Minaj)さんも、サウジにおける人権問題を理由に、7月に予定されていたジッダ世界フェスト(Jeddah World Fest)への出演を取り止めている。

 それでも11日に会場のスタジアム前で胸を熱くして開演を待っているティーンエージャーやその親たちは、大勢の若者たちが集結してポップ音楽のビートに身を揺らす機会など滅多にないサウジアラビアで、今後もこうした公演は増えるだろうと期待している。

 緑色のサウジアラビア国旗を肩に巻きつけた若者、ムハンマドさんは、自身のアートや音楽作品をユーチューブ(YouTube)で披露する、アマチュアのユーチューバーだという。彼はBTSのサウジ公演について「自分にとって、とても重要な意味がある」と語った。BTS公演を通じて、サウジ国家や経済を支援していると感じられるのだという。さらにムハンマドさんは、「僕たちが全ての人たちを歓迎しているということを、世界中の人たちに示すことができる」と付け加えた。(c)AFP/Aziz EL MASSASSI