【10月11日 AFP】(更新)トルコがシリア北部のクルド人勢力に対する越境軍事作戦を開始したことを受け、空爆や砲撃から避難を余儀なくされた民間人は、9日の進攻開始から1日足らずで推計7万人に上っている。クルド人民兵部隊は10日もトルコ軍を食い止めようと反撃を続け、一帯では人道危機の恐れが高まっている。

 ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は、トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領によるクルド人攻撃を事実上容認した判断の正当化に追われた。匿名の米当局者は10日、トランプ氏が停戦仲介を米外交筋に要請したと語った。

 クルド人勢力は、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の「カリフ制国家」を打倒する戦いで1万1000人を失いながら中心的役割を担い、米国とは同盟関係にあった。このため、今回の米国の対応は露骨な裏切りとの見方が強い。

 トルコの進攻を非難する声は国際社会でも大きく、国連安全保障理事会(UN Security Council)は緊急会合で対応を協議。仏、独、英、ベルギー、ポーランドの欧州理事国5か国は、トルコにただちに対クルド攻撃を中止するよう求めた。

 シリア北部の一帯では10日、自宅を逃れた民間人らが車や徒歩で家財を運びながら避難する姿が見られた。国連人道問題調整事務所(OCHA)の10日の発表によると、トルコの進攻開始からこれまでに避難を余儀なくされた人は、推計7万人に上っている。

 在英NGOのシリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)やクルド人民兵らによると、前線は約120キロの長さに及び、各地で激しい戦闘が起きている。トルコ軍と民兵勢力は、これまでにシリア北部の11村を制圧したという。

 9日にトルコ軍の砲撃を受け、クルド人住民の多いカミシリ(Qamishli)から家族を連れて避難してきたリザン・ムハンマド(Rizan Mohammad)さん(33)は、「地方に向かっている。爆撃の再開や戦闘の激化が恐ろしい」「もはや安全だとは思えない」と語った。(c)AFP/Delil Souleiman