【10月10日 AFP】米プロバスケットボール(NBA)、サンアントニオ・スパーズ(San Antonio Spurs)のグレッグ・ポポビッチ(Gregg Popovich)ヘッドコーチ(HC)は9日、経済的に莫大な利益をもたらす中国とのビジネス関係に亀裂が生じている中で、NBAのコミッショナーを務めるアダム・シルバー(Adam Silver)氏が言論の自由を守ると訴えたことに「感動した」と明かした。

 ヒューストン・ロケッツ(Houston Rockets)のダリル・モリー(Daryl Morey)ゼネラルマネジャー(GM)が、香港で続く抗議デモへの支持をツイッター(Twitter)に投稿して中国から猛反発を受けている騒動に関して、ポポビッチHCは「NBAのメンバーに対する表現の自由」を支持すると発言したシルバー氏を称賛した。

 現役のNBA指導者で最も長くチームの指揮を執り、先月中国で開催されたFIBAバスケットボール・ワールドカップ(FIBA Basketball World Cup 2019)で米国代表を率いたポポビッチHCは、マイアミ・ヒート(Miami Heat)とのプレシーズン戦を控え、「彼は言論の自由を強く訴えた」「改めて素晴らしいと感じた。彼は最高のリーダーであり、とても勇敢だ」と報道陣に語った。

 これまでドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領を痛烈に批判してきたポポビッチHCは、その名前を出さずに同大統領と比較するかのごとくシルバー氏を称賛し、「リーダーシップも勇敢さも雲泥の差だ」とすると、「簡単に言えることではなかった。(シルバー氏は)経済的打撃の可能性を承知の上で、あの発言をした」と語った。

「しかし、彼が支持したのはわれわれ全員が大切にしてきた、あるいは3年前までわれわれの大半に許されていた原則だ。だから、私は彼の言葉に感動している。あの発言で示された勇気とリーダーシップは、比較にならないほど優れている」

「われわれがこの3年間、テレビで話したり聞いたりしていた疑問はすべて、『どんな国を望んでいる? われわれは誰なのか? われわれはどこへ行きたいのか?』ということだ」

「アダムが話したことは、(サウジアラビア人ジャーナリストの)ジャマル・カショギ(Jamal Khashoggi)氏が殺害されたことに何の反応もできないような臆病さよりも、自分たちがどの方向に進むべきか理解する手助けになる。リーダーシップや勇気が何の意味も持たないところで、そういった出来事がたくさん起きている。自己権力を求める者ばかりだ」

「だから、私は感動した」

 シルバー氏が、ロサンゼルス・レイカーズ(Los Angeles Lakers)対ブルックリン・ネッツ(Brooklyn Nets)のプレシーズン戦が行われる中国への渡航準備をしていた中で、上海ではモリー氏の「不適切な発言」とシルバー氏の「不適切な立場」を訴えて関連イベントを中止。さらに、各チームのメディア会見などもキャンセルされた。

 国営中国中央テレビ(CCTV)と中国IT大手「騰訊控股(テンセント、Tencent)」が、すでに予定していたレイカーズ対ネッツ戦の2試合の中継を取りやめているほか、複数の大手企業もスポンサーから撤退した。(c)AFP