【10月8日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領がシリア北部の要衝地域からの米軍の撤退を決めたことを受け、トランプ氏を強く擁護してきた議員らを含む共和党の重鎮らが7日、怒りをあらわに大統領を批判し、同盟勢力であるクルド人を見捨てる決定だと警告した。

 トランプ氏は、シリアのトルコ国境沿いやその周辺からの米軍撤退を突如決定し、長らく懸念されていたトルコのクルド人勢力攻撃を事実上容認した。クルド人勢力は数年にわたり続くイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」掃討作戦で米国に協力してきた主要勢力であり、米軍撤退によってイスラム過激派が復活する懸念も高まっている。

 大きな権限を持つ上院司法委員会(Senate Judiciary Committee)の委員長で、トランプ氏支持派の代表格であるリンゼー・グラム(Lindsey Graham)上院議員は、決定撤回を議会に呼び掛けると表明。この決定は「惨事を引き起こすもの」で、「クルド人勢力を見捨て、米国の名誉に傷をつける」ものだと述べた。

 共和党の議会トップであるミッチ・マコネル(Mitch McConnell)上院院内総務も声明で「シリアからの性急な米軍撤退は、ロシア、イラン、そして(シリアのバッシャール・)アサド(Bashar al-Assad)政権を利するだけだ」と警告。さらにミット・ロムニー(Mitt Romney)上院議員やニッキー・ヘイリー(Nikki Haley)前国連大使ら共和党の重鎮からも批判の声が上がっている。

 民主党からもトランプ氏批判が相次いだ。2020年大統領選で同党候補指名を目指すバーニー・サンダース(Bernie Sanders)上院議員は、米国の中東への軍事介入終了は支持するものの、トランプ氏の「極めて無責任な」発表は「さらなる苦しみと情勢不安をもたらす可能性が高い」と指摘。2016年大統領選でトランプ氏に敗れたヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)元国務長官も「クルド人と大統領の就任宣誓、両方に対する鼻持ちならない裏切りだ」と批判した。

 一方、トランプ氏はツイッター(Twitter)で撤退の決定を擁護し、今後はシリアと周辺国が「状況を解決」する必要があると明言。「クルド人はわれわれと共に戦ったが、そのために莫大(ばくだい)な資金と装備が費やされた。彼らは数十年トルコと戦っている。私はこの戦いをほぼ3年にわたり阻止してきたが、このばかげた終わりなき戦争から手を引く時が来た」と書き込んだ。

 だがトランプ氏は後に、方針を転換するかのような姿勢も見せ、「私がその素晴らしく無類の見識をもって許されざる行為とみなすことをトルコが行えば、トルコ経済を完全に破壊・抹消する(以前にもしたことがある!)」と投稿した。(c)AFP