【10月14日 AFP】米フロリダ州マイアミに住むニディア・シルバ(Nidia Silva)さん(78)は、バーチャルリアリティー(VR)でイルカと一緒に泳ぐという夢をかなえることができた。このVRゴーグルは、高齢者のうつ病や孤独を癒やす取り組みを行っているマイアミのNGO「イコーリティーラボ(Equality Lab)」が配布したものだ。

 シルバさんはゴーグルをつけ、目に見えないイルカをなでているかのように空中で優しく手を動かした。「別世界に連れて行ってくれる。とても気持ちが落ち着いた」

 19年前に米国に移住したシルバさんは、マイアミのリトルハバナ(Little Havana)にあるキューバ系住民の憩いの場ドミノ(Domino)公園に座り、「とても興奮した」と語った。まるでキューバの海で泳いでいるようだったという。

 デジタル・ヒューマニティーズの専門家であるフランス人のアレクサンドラ・イワノビッチ(Alexandra Ivanovitch)氏は、キューバ出身の高齢者をVRでハバナのマレコン(Malecon)通りや宇宙、海底、山の頂上などに連れて行っている。

 イワノビッチ氏によるプロジェクト「VRジニー(VR Genie)」は高齢者を「孤独や社会的孤立」から救う狙いがあり、特に独り暮らしや介護施設に暮らしていてあまりやることがない高齢者を対象としている。イワノビッチ氏は「私たちはVRによって高齢者の願いをかなえたいと思っている」と説明した。

 プロジェクトの対象者は、肉体的または財政的に自力で旅行することができない人が多いが、VRによって死ぬまでにやっておきたいことリストに載せている場所など今まで行ったことがない所に行くことができるという。

 VRジニーを運営するイコーリティーラボは、マイアミデード(Miami-Dade)郡による「エイジ・フレンドリー・イニシアチブ(Age Friendly Initiative)」の少額助成金を受けている。イワノビッチ氏は大規模な「夢の図書館」の準備ができ次第、介護施設にVRヘルメットを配布したいと考えている。