【10月10日 東方新報】市場調査会社IDCによると、2018年の世界のスマートフォン出荷台数は前年比で4%減少。韓国電機大手サムスン電子(Samsung Electronics)や米アップル(Apple)などの大手が苦戦する中、世界4位の小米科技(シャオミ、Xiaomi)は快進撃を続けている。「アップルのモノマネ」とも言われた販売戦略に一時は陰りが見られたが、さらなる飛躍を遂げている。そのキーワードは「高級化」「国際化」「総合家電化」だ。

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 シャオミは2018年12月期決算の最終損益が134億元(約2028億円)の黒字となり、前年同期の438億元(約6628億円)の赤字から見事に黒字転換した。今年3月期決算の最終損益も31億元(約469億円)の黒字で、前年同期の70億元(約1059億円)の赤字から改善した。最高経営責任者(CEO)の雷軍(Lei Jun)氏は「世界的にスマホ市場が振るわない中、シャオミは急成長を遂げた」と胸を張った。

 2010年に創業したばかりのシャオミは「iPhone並みの性能で価格は半分」という戦略で急成長を遂げた。アップルの受託生産メーカーでスマホを製造し、新製品を年間1機種に絞って大量生産。広告費を全く使わず微博(ウェイボー、Weibo)などの口コミを活用し、通信事業者と関係なくオンラインで販売した。

 こうしたコスト削減策で、10万円を超える価格の機種が多いiPhoneに対し、性能で劣らないスマホを4万~6万円で販売すると、中国の若者をとりこにした。シャオミは「中国のアップル」と呼ばれ、雷軍氏は新製品の発表会場に、アップル創始者スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏と同じようにTシャツ、ジーンズ、スニーカー姿で登場。米経済誌「フォーチュン(Fortune)」の2019年世界企業番付500に、最も若い企業として初めて468位にランクインした。

 だが、中国国内でスマホ需要が一巡すると、シャオミも伸び悩みを見せる。中国の2018年のスマホ出荷台数は前年比1割減で、2年連続で前年実績を割り込んだ。シャオミは赤字を出すようになり、販売戦略を大きくシフトした。

 まずはスマホの「高級化」だ。前出の通り、シャオミハイスペック低価格のスマホで市場を席巻したが、「シャオミイコール格安メーカー」というイメージも強かった。そこでスマホの高級シフト化を図り、2018年12月期決算では販売単価を中国国内で30%押し上げた。平均単価の上昇は収益向上につながった。

 そして「国際化」。ハイエンド(高性能)機種でも2万~3万円とアップルやサムソンの半額以下のスマホを引っ提げ、中国限定販売から海外進出に乗り出した。中国と並ぶ世界2大スマホ市場のインドでは、高性能ながら約1万円の価格で「レドミ(Redomi)」を販売し、シェア1位を獲得。そして人口合計6億人、平均年齢35歳未満の東南アジア諸国連合(ASEAN)にも進出し、ミャンマーで1位、インドネシア、ベトナム、シンガポールで3位、マレーシア、ラオス、カンボジアで5位と瞬く間に浸透した。スペインなど欧州でも販路を拡大すると、今年6月末の海外販売拠点は前年同期の2倍近い520店舗まで増え、売上高に占める海外比率は4割を突破した。

 さらに成長を支えているのが、スマホと連携したIoT(モノのインターネット)を軸とした「総合家電化」だ。「スマホとIoT家電が2つの成長エンジン」と雷軍氏が言うように、小米は今やスマホメーカーでなく総合生活家電メーカーに進化した。

 スマホと同じ薄さで人工知能(AI)機能搭載の50型4Kテレビが約3万円、アップルウオッチと同機能で電池持ちが2週間以上のスマートウオッチが約1万6000円、外出先からスマホで電源を入れてご飯が炊けるスマート炊飯器が約1万円、手のひらサイズのミニドローンが約7000円、有機ELディスプレー(OLED)表示付きのコンパクト空気清浄機が約1万5000円。さらにスマホとつながるAIスピーカー、ロボット掃除機、電動スクーター、ドライブレコーダー、VRヘッドセット、エアコン、ノートパソコン…。シャオミはスマホのアプリや家電製品などを開発する企業約260社に投資しており、次々と商品を開発している。白を基調としたシンプルかつ洗練したデザインは若者の間でオシャレなイメージとして広がっている。

 雷軍氏は「次世代通信規格の5Gの発展は将来の大きな成長をもたらす」と話し、小米は5G関連の投資に力を入れている。世界的に頭打ちのスマホ市場も、5Gの登場で今後は拡大する見通し。小米はさらなる進撃を続けていきそうだ。(c)東方新報/AFPBB News