【10月1日 AFP】ギリシャ政府は9月30日、レスボス(Lesbos)島のモリア(Moria)にある欧州最大の移民・難民キャンプの収容者1万人の退去に着手する方針を示した。同国への経由地となったトルコに送り返す。緊急閣議での決定として発表した。

 モリアのキャンプでは29日、火災で少なくとも1人が死亡した後、当局の対応の遅さに抗議する群衆による暴動が発生していた。

 レスボス島を含むエーゲ海(Aegean Sea)各島の移民・難民収容施設は過密状態にあり、ギリシャ内外の当局者が圧力を緩和する措置を求めている。

 ギリシャには現在、シリア難民や2015年以降に母国を逃れた移民合わせて約7万人が滞在。こうした移民・難民は、隣国トルコから入国した。ギリシャ政府によれば、レスボス島には過去3か月だけで約1万人が上陸しており、モリアのキャンプでは定員3000人に対して約1万3000人が収容されている。

 ギリシャ政府は2020年末までに移民1万人をトルコに送り返す意向を表明。「急進左派連合(SYRIZA)前政権の4年半で1805人」の移民が送り返されたとした上で、このペースを引き上げるとした。

 さらにギリシャ政府は、すでにキリアコス・ミツォタキス(Kyriakos Mitsotakis)首相率いる保守政権が、エーゲ海でのパトロール強化や、難民申請が認められなかった人の施設への受け入れ停止、移民・難民の保護制度を刷新する計画を発表してきたと説明した。

 29日の火災では、ギリシャ当局が女性1人の死亡を確認。さらにギリシャメディアは、女性の傍らで見つかった焼けた毛布に赤ん坊の焼死体が包まれていた可能性があると報じている。警察筋はこれに先立ち、母親とその子どもが死亡したと述べていた。

 またギリシャ保健省は30日、火災では、ほかにも子ども2人を含む移民17人が負傷し、レスボス島のミティリニ(Mytilene)にある病院に搬送されたと明らかにした。

 エーゲ海に浮かぶギリシャの島々はトルコ沿岸から近く、到着する移民・難民の数は増え続けている。各島の収容施設は危険な状態に陥っており、アフガニスタン出身のファリドと名乗る若者はAFPの取材に対し、「多くの移民がとても落ち込んでいるし、ストレスを抱えている。また事故が起こるのではないかと不安に思っている」と話した。

 欧州連合(EU)のディミトリス・アブラモプロス(Dimitris Avramopoulos)欧州委員(移民・内務担当)は今週、独仏の内相と共にギリシャとトルコを訪れ、この問題について協議する予定。(c)AFP/Angelos Tzortzinis on Lesbos and Katerina Nikolopoulou in Athens