【9月14日 東方新報】中国の伝統的な祝日「中秋節(Mid-Autumn Festival、旧暦8月15日、今年は9月13日)」に食べるものといえば月餅。あんは、小豆やハスのほか、豚肉や塩漬け卵を入れたものがあり、豚肉月餅(鮮肉月餅)は上海などでは定番だ。さらに今年は、植物人工肉製造会社「珍肉(ZhenMeat)」や、春雨などの食品メーカー「双塔食品」が、人工肉でできた肉あん月餅を初めて売り出し、話題になっている。

 珍肉は6日から、「植物肉月餅」を3000箱限定で予約販売を開始。売り出し4日目で約半分が売れた。9月5日には双塔食品が1000箱限定発売の「素、肉月餅」を売り出すと、1日で完売した。

 だが、話題の理由は「おいしいから」というわけではなさそうだ。試食してみると、見た目は本物そっくりの肉あんで、弾力もあれば肉汁もたっぷりだが、本物の肉に比べると、味は少し単調で、食物繊維特有の食感しかないものも。残念なのは肉独特の風味に欠けること。南方都市報の調査では、80.8%の人が「人工肉月餅は買わない」と答えた。

 人工肉は、大豆やエンドウ、海藻類など植物たんぱく質を原料につくられ、本物の肉のような食感を再現している。それなら、仏教信者用の「素食料理(精進料理)」の伝統がある中国にもともとあるではないか、といいたいが、「人工肉」と伝統的「素肉」(中国の伝統的な精進料理用の肉)はかなり違う。

 しかし、投資家目線では、人工肉業界は今一番「おいしい」らしい。ビーガン(完全菜食主義者)が新しいライフスタイルとして流行する中、特に米国では人気急上昇中の投資先なのだ。

 植物肉市場投資に専念する道夫子食品国際(Dao Foods International)の共同創業者の張濤(Zhang Tao)氏によれば、「投資家が注目している植物人工肉は、素肉2.0といったところでしょうか。素肉は大豆などを材料に台所で料理人の技術で肉そっくりに作るものですが、植物肉は見た目も食感も本物の肉に極めて近いです」という。

 中国では、珍肉を含め約10社の植物肉企業が創業、60以上の企業が「人工肉」市場への進出をすでに表明しているという。

 中国植物性食品産業連盟(China Plant Based Foods Alliance)の薛岩(Xue Yan)事務局長は「20年から30年もすれば、植物肉は中国人の生活に不可欠な一部となる」と予測している。(c)東方新報/AFPBB News