【9月7日 AFP】北朝鮮が中国で経営するレストランから2016年、女性従業員12人が韓国へ「亡命」したとされる出来事をめぐり、弁護士らで構成する国際NGO(非政府組織)の調査チームが平壌を訪問し、実際には韓国側による拉致だったと結論付けた。

 この出来事をめぐっては、北朝鮮政府はこの女性らが拉致されたと訴える一方、韓国政府は女性らが自由意思で脱北したと主張し、長い間論争の的となっている。

 NGOの国際民主法律家協会(International Association of Democratic Lawyers)の弁護士らは、今月5日までの6日間、北朝鮮の首都平壌に滞在。レストランの同僚らがだまされてソウルへ向かった一方、自身らは辛うじて逃れたと主張する元従業員の女性7人に話を聞いた。

 この女性らによると、免れて北朝鮮に帰国できたのは、ひとえに女性らのチームリーダーが、レストランの店長と彼女らを空港へ連れていくためにやって来た韓国の情報機関職員との会話を偶然耳にしたおかげだという。

 合同調査委員会の発表によれば、この女性らは逃げ出した一方、他の女性従業員12人は韓国へ連れて行かれるとは知らずに出発してしまっていた。

 同委員会は元同僚7人の証言を取り上げ、この12人は「本人の意に反し、だまされて連れ去られ、家族や国から引き離された」とし「これは拉致という犯罪行為とみなされる」と指摘した。

 平壌で4日に開いた説明会では、調査チームの弁護士の一人がこの件の対応をめぐり韓国政府を厳しく批判。アジア太平洋法律家協会(COLAP)のニルーファ・バグワット(Niloufer Bhagwat)副会長によると、調査チームは北朝鮮政府から「全面協力」を受けたが、韓国政府は現在韓国に滞在している女性12人との面会を許可しなかったという。

 同副会長は「この若い女性らはいまだに韓国の情報機関と警察機関に監視されている」と指摘。「(韓国政府当局は)一部の女性たちが援助を求めて働きかけたことを明らかにしたがらなかった。明らかにしたがらなかった理由は、当局者らは韓国政府による人権侵害に関心がないからだ」と主張した。

 この件をめぐっては、女性らが働いていたレストランの店長、ホ・ガンイル(Heo Gang-il)氏が昨年、従業員らにうその最終目的地を伝え、自分について韓国へ行くよう脅したと告白している。

 ホ氏が韓国のケーブルテレビ局JTBCに語ったところによると、同氏は2014年、韓国情報機関の国家情報院(NIS)に、中国国内で採用されたという。(c)AFP